ガッシュまたはアクリルガッシュとは、
・ガッシュ
ガッシュ(gouache:仏)は水彩絵具に分類される。同じ分類である高い透明性を持つ透明水彩絵具とは異なり極めて高い不透明性が特徴の絵具である。
ガッシュは透明水彩でも使用される展色材(メディウム)のアラビアゴムと顔料と水を素材とし練り合わせる。この展色材をデキストリンに変えたり白色顔料である体質顔料の割合を増やして安価にした絵具が同じ不透明水彩である(体質顔料により耐光性は低くなる)ポスターカラーとなる。顔料の濃度を増やす(又は体質顔料を充填材として加える)事により不透明が高められている。不透明水彩は顔料濃度が高い故に混色すると濁りやすくもある。
性質は、下層に対し塗り潰しの効く極めて高い隠蔽力・被覆力を持つ。水性の絵具であり水で溶いて使用する(濃度が高い方が不透明性を発揮するので絵具に対し少ない割合の使用になる)。速乾性があり透明水彩と同じく乾燥後も水可溶性である。耐久性は顔料を包んで守る役割も果たす展色材の性質や量の少なさにより耐光性(紫外線による褪色しにくさの強度)・耐候性(水分や熱や大気等または外部からの物理的な力に対する強度)が共に低く、乾燥後の塗布面が傷付きやすかったり過度な厚塗りにより乾燥の際の収縮に絵具の皮膜が耐えられず亀裂を生じる恐れもある。
この絵具の長所は他の絵具と比べて少ない量の絵具で広い面積を不透明に覆い潰して塗る事が出来る処にある。そして抑えめの量の展色材である事から展色材が多い場合に起こる暗く沈んだ深みのある透明性を帯びずパステルの様な顔料本来の明るい艶消しの色みを出す事が出来るのも特筆すべき点である。
用途としては、不透明性な塗り潰しの薄い平塗りや乾くと明るい艶消しになる事を活かして、マットな質感が向く絵柄や塗り潰しが必要な平面構成的な絵に向いていると言える。
・アクリルガッシュ
アクリルガッシュとは、アクリル絵具に分類され、前述したガッシュの展色材を水性のアクリル樹脂(の水溶液)に置き換えガッシュの特性にアクリル絵具の特性を加えた絵具である。ガッシュと同じく速乾で不透明性が極めて高く乾燥後には艶消しの明るい画面を形成する。違う点はアクリル樹脂により耐水性が付与され乾燥後の水に対する再可溶性が無くなる事と、同じくアクリル樹脂により乾燥後の絵具の皮膜の強度が増している事である。製品によって、顔料濃度を高くしてガッシュと同じ質感を再現している物もあれば、顔料濃度と共に若干アクリル樹脂の量も増やしつつ加えて白色顔料のシリカ(珪石)等の艶消し材を加える事でガッシュの質感を再現している物も各種アクリルガッシュに含まれる材料の記載を見るに見受けられる。樹脂量の少ない方の絵具は表面を引っ掻くと傷が付きやすく、樹脂量の多い方は傷付きにくいが乾燥後の明るい艶消しの質感が僅かに失われ若干透明性の深みを帯びている様に見える。
その性質や用途もガッシュと似ていて近いが、アクリルガッシュは耐水性があるので際限なく塗り重ねる事が可能となり(ガッシュは非耐水性なので下の塗りが溶け出す事もある)、アクリル樹脂の量が多い物になる程に多少の厚塗りにも耐え得る様になる。耐光性や耐候性も樹脂量により強度が上がる。使い方もガッシュ同様に水のみで使用出来る。加えてメーカーによっては質感や使用感をアレンジする為の絵具に足して使用する専用のアクリルメディウムが用意されている事も多い。
ガッシュやポスターカラーがデザインや学習方面で使用される事が多いのに対しアクリルガッシュは絵画方面での使用も増えてくる。