正式な透視図法つまり遠近法としては一点透視図法・二点透視図法・三点透視図法があり、これらは一つまたは複数ある消失点(vanishing point)から放たれ交差するパース線により物体や空間の縮尺が定められる。
絵画以外のイラストやデザインやアニメーションや漫画や建築等様々なビジュアルシーンで使用される事も多い通常の遠近法が一つの厳密に形式化された製図法であるのとは異なり、
空気遠近法とはまだまだ現在でも一般的には公式に製図の様に形式化された手法としての認識ではなく絵における描写方法の一つとして絵を描く者の間で認識・共有・使用されている遠近を表現する方法の一種であり線では無く色相や明度や彩度等の色彩で空気感つまり大気が遠近における周囲の色彩に及ぼす影響を描写する事で空間内における距離感を表現する描画方法及び理論である。
空気遠近法では遠くにある物と近くにある物や視点となる見る人の間にあたかも空気(大気の層)があるかの様に色相や明度や彩度を距離によって変えて描写する。その事で距離感を疑似的に二次元に表す。遠い場所にある物は大気の層により色付きセロハンの様なフィルムに包まれたかの様に元の色味を失いその大気の層の色に染まる。
近景(および中景)と遠景(および地平線付近)を比較した時にそれはよく理解出来る。地平線に近付くにつれ視点となる自身との間にある大気の層が増えて重なっていくので、より明るい色光に近づいていき明るく淡くのっぺりと平坦な面に見える様になる。どちらかと言えば地平線の明るい光との対比で陰影の暗部に顕著に見て取れて良く晴れた屋外では遠景になればなるほど青空からの陰影への青い色光の反射光の遠近での明暗の移り変わりがよく分かる。
基本的には空気遠近法は大気の層の重なりがある程度必要となるので遠景を持つ景観の絵に用いられる。しばしば近景・中景においても意図的に誇張して距離感を与える為に用いられる事もある。 そして空気遠近法または通常の遠近法を各々単体で使ってもその色彩のみでまたは線のみでも遠近感を表す事は出来るが併用する事でより強い遠近感を表現する事が可能となる。