ニュースでたまに話題になるアニメ業界とくにアニメーター等のクリエイターの長時間労働低収入が取り上げられるのだけど、十年前の2010年代、さらには二十年前の2000年代にもその話題になる。バブル期のニュースを探ると好景気のせいか聞かない。とはいえ手塚治虫の時代から製作費を抑える等の話も聞くのでおそらく変わらないのだろう。少なくとも儲かる職業としては未だ聞かない。
発注の上流工程で中抜きされて現場の製作サイドまでお金が流れてこないらしい。今明るみになっている政府や行政及び大企業の中抜きの話を見るにあり得る話である。
自分もアニメ業界の製作の現場で短期間働いていた経験からその頃の現実を知ってはいるのだけど、なぜ才能を要求され注目を浴びる職種なのにその様な一般的な環境と比べると劣悪な状況からほとんど変わらないのだろうかととても不思議だと感じる。
年収で言うと百万円代のアニメーターの話をニュースでは聞く。おそらくこれは新人クラスの収入で上の人たちはもっと多く稼いでいる。あまり知り得てないが一般人レベルには。(とはいえ一般企業で新人でもこれはあり得ないけど)
雇用形態では、会社員として雇う会社もあるが、机貸しの事業請合いの個人事業主として契約するケースが多い。(今は多少改善されてると良いのだけど)
なので社会保険等は無い場合が多い(その辺りは会社による)。自身も新人クラスで週六日(休憩除く)十二、三時間近く働いて十万円+歩合。実際には社員でないので法定労働時間等無く残業代も無し。社保は無かったから国民年金や国民健康保険は自分で支払わなくてはいけないので実質手取りとしてはさらに低かった。なので収入が百数十万円という話も他の人達もそうだったんだと頷けるが、たしかに今考えるとおかしかった。別の業界の仕事を経験してみるとなおさら。
まぁ好きでやってるから仕事自体はつらくないのだけど。しかしその観念が逆にいけないのだろう。執着し過ぎるのは不味いけどあまりにもお金にこだわらなくなるのも。
もちろんなり手は沢山いるから賃金が安くしていても人は入ってくる。現場の人達は忙しくて声を上げる事も難しいのは想像できる。
ただあまりに一般のというか仕事のプロとしての一般の職業観からかけ離れてるとは思う。職業でなく修行を積む様な伝統芸能の徒弟制度の様な昔の職人仕事であるというなら仕方ないが。
ただそういう事を続けていくなら、デフレで不況続きの経済への未来への展望も見出しづらい昨今の日本、さらに賃金は下がり、賃金が全てでないにしても食えなければ若者のなり手は減り、やがては賃金の安い国外へ仕事は流れ、国内技術が衰退し、アニメの本場が海外に移り、日本発の日本人が好きなアニメが経済の衰退と共に少なくなってく可能性も予想出来なくはない。これはクリエイティブ系の職業の多くにも通じると考える。
だから製作サイドの待遇の改善を、食い潰すのでなく将来を見据えて発注する上層部も見直し(でないと自分らも潰れていくので)、現場の人ももっと自身及び未来の担い手の環境の改善を強く訴えても良いのではないだろうか(もう訴えてるかもしれないがもっと強く)。とても素晴らしい世界に誇れるものを作られているのだから。
と取り沙汰される話題を聞くと考えてしまう。実は今はもっと良い環境になっていると良いのだけどなぁ、とも願う。