画材は好きでよくウォッチャーしている私ですが久しぶりに画期的だと感じたのが、クサカベから販売している油絵用の加工乾性油のブラックオイルです。
"リンシードオイルに一酸化鉛を混ぜ、熱を加えて重合を促進させた画溶液。西洋古典絵画などに用いられたこの画溶液は、乾燥が早く、光沢があり、絵具と混ぜると伸びが良くなります。" との事。
含有成分は重合亜麻仁油と脂肪酸鉛。
乾燥時間は約24時間(指触乾燥)。※温度、湿度により異なる(塗りの厚さも当然影響するだろう)。
薄塗りを重ねる塗り方に適している(グレーズ技法向きという事だろう)。
アラブリマの直描き(中〜厚塗り)だとしても乾燥は早まる。
本製品のカタログでは、薄めないそのままのブラックオイルを画面に塗布してから描画を始めると滑らかなグラデーションが得られるスフマート技法が紹介されている。
実際に使用してみて、普通の中塗りでも24時間くらいで乾き、乾燥の遅い絵具でも1.5日〜2日くらいで乾燥(ペトロール5:Bオイル5)。
光沢は比較的カラッとしていて光沢はあるもののギラつきは少なく生油に近く感じた。(それでも使い過ぎるとギラつくが)
基本的にはこのオイルと揮発性油があれば描画に事足りると思う。調合油は別として、樹脂ワニスや乾燥促進剤まで揃えずとも描けるのは手間を稼げる。(絵具のノリが悪くなってくるのでダンマル樹脂などを少し加えた方が良いかなとは感じたが)
絵具ののびは一通り描画が終わる頃まではしっかりとサラサラしていてた。筆をとられるのが苦手な人には良いと思う。
透明度は普通。
油自体の濃い色も揮発性油で薄めてる事もあり、白に混ぜてもそこまでは気にならないレベルに見えた。
おつゆ描き〜中描き〜厚塗りの一般的な描き方でも徐々に油分を増やしていけば良いパフォーマンスを発揮すると感じた。
※(どの画溶液にも言える事ではあるけど)乾燥が早く自然発火の可能性が高いと製品の裏ラベルに大きく記載されている事から後始末は特に気を付けた方が良いのだろう!
ただ描画して乾くまでそれほど待たずして再度描画に戻れるのは制作する上で大変利点があり、偽りは無かったと感じた。
同性能の製品としてホルベインのヴェルネシリーズから発売されてるブラックオイルもある。スタンドオイルをベースに鉛白を加え加熱した物。乾燥を速め深みと透明度を与える。濃褐色の色は乾燥につれて薄まり、黄変も少なく画面に滑らかさと強い光沢を与える。クサカベの物は液状であるがこちらは高粘度と記載されている。