ビチューム、またはアスファルト・ビチューメン・瀝青色とも呼ばれる。
熱したリンシードオイルに溶かされる作られる。油に半ば溶解してしまい顔料というよりも染料の性質を持つ。タール系化合物で石油の残留成分が化学変化した物。古くはヨーロッパの地方の鉱脈や海底で採取されエジプトや中東において天然の樹脂等と合わせて木乃伊(ミイラ)作り等に多用途に用いられていた。16世紀にはヨーロッパにおいて絵画にこの木乃伊を砕いたビチューム粉を油と練り合わせて絵具として使用していた様でもある。
色味は透明な黒褐色でタール臭がし油溶性で油絵具化する事が出来るが油の乾燥を阻害するので乾燥性が無いか固化しても熱で柔らかくなりやすい。用いる量にもよるのだろうが、下描きで用いると速く乾く上層の収縮に、乾かない柔らかいビチュームの下層が上層の収縮に耐えられなくなり上の層に皺を生じる可能性が高くなる。また絵具の上層が動いてしまう事もあった様だ。加えて下層から上層にブリード(滲潤)つまり滲んできてしまい上層を強く変色させる。
その絵画にとって不都合な性質を知ってか知らずか(恐らく知らなかった)18〜19世紀においてもその魅力ある色味の為か使用され続けて被害を受けた絵画が多く修復が必要とされる事となった。
そういった不具合もありつつ魅力ある色でもあるので名前のみ残して他の安全な顔料で調色した代替品で発売されている事もある。その一方で顔料そのままで発売しているメーカーもあるらしい。
絵具化するのにとても多い油の量が必要である事から伸びも良く使いやすかったであろう事とその透明で魅力的な褐色で下描きや上描きに多用しやすかったであろう事と乾かずいつまでも描いていられる性質の為か使い勝手が良かったので多くの画家が用いていたのだろうと考えられる。
今ではほとんど使用されていないが史学的にとても興味深い絵具であるので性質をまとめてみた。