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黒を使わないで描く

絵を描く時には黒い絵具は注意して使っている。具象画、抽象画問わず。もちろん固有色としてもとても良い魅力のある色である。暗くするのにもとても有効で。ただ使いどころを見極めないと単体で使用しても混色して使用しても色の性格が強すぎて周りの色と調和しないし墨を流し込んだ様な濁りが画面に生じる。上手く使わないとこちらが他の色と共に喰われてしまう。逆に上手く使えばとても魅力ある美味しい色でもある。
陰影を描く時には黒を使うより暗色で透明色の補色同士の色を混色して作る暗い色の方が深みのある黒を作る事が出来る。もちろんそこに黒を適量混色してただ単色で黒を使うより暗い色として表現が広がる。黒にほんの少し深く暗い赤や青を足すだけでも闇として黒の性質を与える事が出来る。そもそも暗室や暗黒空間でもない限り光が侵入してきて何らかの色味は存在するのだから。それと明るい色と混ざるととても不協和と言えるほど濁る。その不協和を調和に取り入れる事も出来るとはいえパレット上では明るい色から遠ざける方が良い。黒と言ってもそれは我々の視覚が見て感じる闇ではない。黒自体は暗さと同時に明るい色味をも持つし闇を表す為の深さも描き手の技術で与えなければいけない。
抽象画や暗い色としてでなくある物の固有色として使用する場合もある。それは暗色としての現実の色味としてでなく黒の他の色に無い独特な色の面白さや性格を他の色と同じ一つの色として扱う事である。
西洋画では黒を闇として絵に用い、日本の日本画や浮世絵では一つの色として用いた様に。
黒を画面を引き締める為にほんの少し使用しただけでもそこに視線を集めるほどの強さがある。ルノワールが黒は色彩の女王だと言った様にまさしく強く強大でしかし華やかさがある色である。