ヨーロッパにてルネサンス時代以降に祭壇画や壁画よりも絵画の大型化に伴って軽量で移動性・携帯性に優れるキャンバスが拡まる事になる。
絵画用キャンバスは主に油絵、アクリル画、アルキド絵具等に使用され、使用される素材や用途にいくつかの違いがある。
・画布
キャンバスの木枠に張られる布。
現在では亜麻(リネン)、綿(コットン)が主に使用される。
亜麻は古くから絵画用キャンバスに用いられ画布用の繊維の中では湿度による伸縮が少なく劣化に対して最も丈夫で一般的な画布である。
綿は亜麻より繊維としての丈夫さは劣るが安価で表面の織目の網目(粒面)がきれいな均一な粒面な特徴がある。
織目の粒面には荒さ細かさ別に、細目、中目、荒目の画布がある。
・木枠
キャンバスの布を張る土台。画布は釘により木枠に止められる。
現在では杉または桐の木枠が主に用いられる。
杉の方が硬く湿度による歪みに強い。桐はその点で劣るが安価で軽く扱いやすい。
大きさは規格サイズでは最小は0号から1号,2号,sm,3号…と各号数が有り大きいものでは100号〜500号以上と大小ある。
・形
縦横の比率がF、P、M、Sと有り用途により異なる。F(figure)は黄金比率の縦横で主に人物画や静物画に、P(paysage)は横長で風景画に、M(marine)は更に横長のパノラマで海景画に、S(square)は正方形で特に決まった用途は無いが正方形の縦横同比率の整った完全性を印象として与えるので抽象画にも向いている。
他には丸、三角、多角形、屏風型等とユニークな形があり、ハガキやカードサイズの極小の物もある。キャンバスの側面部の厚みの大きいタイプの側面部まで絵の描いて額縁無しでの展示を想定した現代アート向きのキャンバスもある。
・下地塗料
元々はただの生地である画布はそのままでは使用出来ないので、絵具の定着を促す為そして絵具が生の生地に染み込んで傷まない様にする為の目止めとして膠やカゼインを塗る。そしてその上から一般的な下地の色である白色塗料を塗布する。市販されている物は基本的にそれらの処理は施されている。逆に言えば白色塗料を塗らず有色塗料でも良いし目止めだけを塗布して生地の色を活かして描いても良いとも言える。
上に塗る白色塗料に乾性油(リンシードオイル)と鉛白又はチタニウムホワイト等の顔料による下地剤を塗布するとその油分により上に乗せる絵具の下地への吸収を抑える非吸収性下地になる。膠等の水性メディウムと乾性油をエマルジョン(乳濁)=中和させ白色顔料と混ぜた物は半吸収性下地となる。水性メディウムと乾性油の比率の偏りにより吸収性にも非吸収性にも近付く。膠やカゼイン等と白色顔料を混ぜた物は吸収性のある高い下地になる。アクリルジェッソでも吸収性の高い下地を作れる。
吸収性が高いと絵具を吸い込み下地への定着が良く、非吸収性が高いと(使用は油性塗料又はテンペラ・アルキド絵具に限るが)描き始めから絵具の伸びや滑りが良く吸収されにくいので艶が消えにくい。どちらが良いというわけではなく用途による。
非吸収性下地の物は主に油絵具等の油性塗料(又はアルキド絵具やテンペラ)で使用される。半吸収性下地と吸収性下地の物は水性及び油性の塗料でも使用される。