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コバルトバイオレットについて

コバルトバイオレット(cobalt violet)の顔料及び絵具は1859年に西洋で開発され他に無い鮮やかな色の紫色絵具として絵画に使用されてきた。中〜高明度の明るい紫または赤紫の色みを有している。

コバルトバイオレットには三種類ある。

・コバルトバイオレットライト
名前の通り明度の高い赤み帯びた紫色。砒酸コバルトから成る。砒素による強い毒性がある(口や傷口等から体内に摂り入れない様にすべし)。アメリカやイギリスの色料の規格であるC.I.Name(カラーインデックス名)では定義されておらずPigment Violetに分類されるが "-"と空欄で表記される。顔料区分の分類では合成無機顔料となる。

・コバルトバイオレットディープ
最初に開発されたコバルトバイオレット。コバルトバイオレットライトより暗く深みのある紫色。リン酸コバルトから成る。湿気等の水分に長く晒されると赤く変色する恐れがある(仕上げ用保護ニスの塗布で防止可能)。C.I.Name(カラーインデックス名)ではPigment VioletのPV14となる。顔料区分の分類では合成無機顔料となる。

・コバルトバイオレット
他の種類の物より後年に開発されたコバルトバイオレット。コバルトバイオレットライトに近い明度の高い赤みを帯びた紫色。リン酸コバルトとリチウムから成る。安全性や耐久性も高くなっているのでコバルトバイオレット系顔料の主流となりつつある。C.I.Name(カラーインデックス名)ではPigment VioletのPV47となる。顔料区分の分類では合成無機顔料となる。

コバルトバイオレット系顔料の絵具は総じて着色力は弱い。他の色との混色では自身の色が喰われやすい。広い面を塗り潰すには多量よさの絵具を必要とする。透明性は半透明〜半不透明。耐光性(紫外線による色褪せに対する強度)はとても強い。耐候性(熱や水分や有害な大気等による変色や破壊に対する強度)はPV14とPV47を描画に用いた場合は特に画面保護のニスが推奨される。コバルトバイオレットディープは耐アルカリ性が弱く水性絵具で使用されない。他の色との混色の際に化学反応を起こしにくい不活性さを持つので混色制限は無い。一般的に販売されている絵具の中では最も高価な部類の顔料及び絵具となる。

描画の用途としては水分に弱いので水彩絵具よりも油絵具で使用される。その鮮やかな美しい紫色を活かして混色はせずに単独で用いたり、透明性を活かしてグレージングの薄塗り技法に用いたり、白色等の混色による調色で不透明色として用いたりする事が多くなる。

少ない紫色顔料の中で他に無く混色では作り得ない高い彩度を持つ重要な紫色顔料及び絵具である。