本来静止した絵である絵画やイラストやデザイン等の一枚絵で動きを出すにはどうしたら良いか。
基本的には構図の取り方で動きを表現する事も出来る。
・斜線を構図に取り入れる
例えば主役となるモチーフを真っ直ぐ立っているか寝ているかのごとく垂直線や水平線になる様には配置せず斜めになる様に配置するだけで同じモチーフでも動きを演出する事が出来る。
水平線は安定や平静を想起させ死や睡眠等を暗示させると言われ、垂直線も自立や強い意志や威厳等を想起させる強い力があり強固にその場に立ち止まり留まらさせる性質も持つので傾かせそれらの性質を弱める事で動きを与える事が出来る。
単純に棒立ちしている人の画像を少し斜めに傾けるだけであたかも走っているスピード感を与える事が出来たり、地平線や水平線を少し傾けるだけで平和な大地にアクション性を与える事も出来る。また水平線と垂直線を交差させて正十字の形を作ると非常に強固な力強い威厳のある組み合わせの構図になるがその絶対的な重厚感から動きが出るとは言いづらく同じ様な力強い構図で動きも与えたいとなると四角い画面四隅の対角線を結び斜線を用いたXの十字の形を構図とした方がダイナミックな動きを与える事が出来る。
・曲線を構図に取り入れる
直線だけでもその線が伸びる方向に動きを与える事も可能だが、その直線にカーブを取り入れて曲線にするだけでさらに動きを与える事が出来る。曲線は煎じ詰めれば回転という運動である。その最たる物が無限にループする円であったり中心から外または外から中心に回転運動する渦巻きであったりと曲線には動きを想起させる力がある。
人の腕や脚は基本的には真っ直ぐ伸びているが骨単位で見ると少し湾曲しカーブを描いていて一見動きの無い人物の絵でも描く際には人体(はもちろんその他有機物)において曲線を強調する方が静かに内包する生命が持つ躍動を与えやすくなる。人工的な無機物にもこれは言え激しく動くスピード感を表現する際には曲線を用いる事も多い。
・非中心にする
四角い画面の各辺の中心点を縦横繋いで出来た垂直線と水平線が交わる画面の中心点にモチーフを配置するのを避ける。画面の中心への配置は主役となるべき威厳と重厚さを与える。時間すらも止めるごとくその場にどっしりと据えられる効果もあるので動きという点では視線を固定させる力も大きいので中心を避ける方が動きを出しやすくなる。主役であっても少し中心からずらすだけでも違ってくる。
・上下左右
先に挙げた中心を避けた後にその他の場所に配置する事になり上下左右のどこかに配置する事になる。上下で言えば上に配置される方がモチーフは心理的に軽く見えるので上の方が動きを出すには好ましい。左右で言えばこれも心理的にどちらが心地良いかによって決まり利き手等の慣れ親しんだ感覚で人により異なる。
・散開させる
上下左右で中心を避けた様に周囲に散らす事で動きを与える事が出来る。その散らすモチーフが多いほど周りに飛び散らかる様な動きを与える。これは中心にモチーフがあっても周囲に複数散開させる事で中心配置の絶対性を緩和し動き与える事が出来る。
・大小差を付ける
その散開させる複数のモチーフのサイズに大小等の差を与えるとリズム感という少し異なる動きを与える事が出来る。
・視線を誘導する
複数配置した目につきやすい(図となる)モチーフや(地となる)空白を視線誘導の要素とし画面内を順番に回遊させる動きを構成し視線が流れる事で動きを感じさせる効果を与える。
例としては、たいていは主役に目が行きその次に隣りのモチーフや空いている空間に目が行き再度主役を良く確認する為に主役に戻る、等がある。
そして構図ではないが以下の方法もある。
・モーションブラー
今までの動きを与える方法とは別に一種の効果としてモーションブラーというものがある。高スピードで動いている物は残像が残って見えるそれである。例えば車が超高速で走れば、車の輪郭の進行方向に対し垂直となる辺が、進行方向と逆方向に残像として伸びて見える。強い力で打ち返したボールや超高速で撃ったパンチの後部がブレて歪んで伸びて見えるといった様な感じに。この手法を使えば静止画でも激しい動きを表現する事が出来る。
・効果線
モーションブラーを漫画の技法で線で表現したものが効果線などと呼ばれる。モーションブラー同様進行方向に線を伸ばす手法や中心から円状に放射される集中線等いくつかの手法があり、一定の方向に規則的に線を伸ばしてスピード感を与える事が出来る。