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絵の耐久力

絵をはじめた頃に、画材には持ちの良さつまり耐久力というものがあると知った。絵にそれほど興味が無かったら絵なんてどれも同じくらいの保存性だと思っていただろう。

長期間の保存が必要ない印刷の用途やその場のみ又はメディアに記録するパフォーマンス性の高いアートはその限りではないと思うけれど、プロの仕事としようとするなら作品の芸術性が高いのはもちろんではあるが描いて売って短期間ですぐ作品が絵具・支持体レベルで物理的崩壊するようではプロ失格ではあるのは間違いない。 経年変化や破損によって味が出たりする事もあるけれど、常なるものは無いというわび・さび文化の儚さというものもあろうかとは思わなくもないが、完成後の観者として見守る態度としてならばともかく、そこに頼るのは作者としては違うと感じる。

という事もあって芸術性という意味での絵作りと同時に、絵の耐久力・耐久性についても考えるようになった。

絵は絵具の層と紙やキャンバスなどの支持体からなる。

絵具の層においては顔料とそれを包む展色材(メディウム)と完成ニスからなる(絵具の種類によってはニスを塗られない場合もある)。
まずは顔料は光・紫外線に対する強さすなわち耐光性と光や水分などの自然的な外部からの影響に対する強さである耐候性がある。顔料により十年〜数百年ほども耐久性に差がある物もある。天然・合成の無機顔料があり値段の高い物も多いがこれらは耐久性が非常に高い物が多い。近年開発された合成有機顔料も工業製品などにも使用され比較的耐久性の強い物が多くなってきた。顔料の中には混ぜるメディウムに対して良いまたは悪い化学反応を起こす物や人体に毒性のあるものもあるのでそれも考慮に入れておきたい。

展色材(メディウム)はそれ自体基本的に耐久性の高い素材が先人たちの試行錯誤から採用されているから正しく使う限りは間違いは起こらないだろう。
支持体にしっかりと定着し、乾燥して硬く柔軟性のある丈夫な皮膜を作り、顔料を守るように包む事が出来るものが良い展色材なのである。顔料はむき出しであると耐久性は弱く、しっかりとした定着性・乾燥性を担保した上で充分な厚さがあるほど顔料は光や水分その他の有害物質から保護されやすくなる。ただ展色材もその性質を知り作中・作後においてどのような作品外部からの影響や内部での化学変化が起こるかなども考慮に入れておきたい。

完成ニスは作品をより強く保護する。主に光や水分、ほこりや有害な空気物質、外部からの衝撃などから守る。長期保存には必須である。ガラス又はアクリル板付きの額装は似たような役割を果たす。

支持体はそれ自体は保存性の高い物が多いが、紫外線や湿気や衝撃などからの保護が必要である。裏打ちや額装をする事は有効である。

ただし耐久力を上げたとしてもそれでも完璧ではないので、絵を保存する時も上で挙げたいくつかの注意点は共通なので、保存環境の悪い場所に置かれるなら作品の劣化は早まるしその逆も言えるので、作品の耐久性 × 保存環境を以ってして絵の持ちの良さとなるだろう。

近年ではCGや撮影・スキャンしてデータ保存で劣化しない作品の残す事も可能かつ一般的になってきたが、
現物にこだわるのならまたは人々が生きた文化の証を伝え遺す為にもやはり耐久性について考える事は必要な事であると思う。