点描とは一筆ずつ点を置いてその色の点の集積で絵を描いていく技法である。絵具の種類を問わずだいたいの絵具で点描は実践出来る。
点描と一言で言っても広義に言えば色々種類がある。
まずは、小さい正円を隙間無く規則的に埋めていく方法。これが一応オーソドックスな方法である。美術史的には新印象派の画家スーラやシャニックらが点描による描法を開発して彼らの絵画により世に普及していった。テレビ等のモニターも光の点の集合体なのでこの点描の部類と言える。
そしてもう一つ、筆でタッチを細切れに正円の点では無いが細長い楕円に近い不規則な有機的な形の点を置いていく方法。これは色を混ぜない事により現実に見える光を絵具の色で表現する印象派の色彩分割のタッチの絵で使われる(またはこの様なタッチは光を表現するという目的ではないがスケッチやラフ画にはよく用いられていた)。上の新印象派も光を表現する為に点描を使っていた。モニターの色も色光を混ぜれば混ぜるほど明るくなる加法混色による色光の点の集合体である。とはいえ点描と言っても上で挙げた様に光を表現するように置く必要もないのだが。
そして点とは言えないほどの大きさの色塊を置いていく方法。これは円形や多角形などの形を置いていくモザイク技法とも言える。正方形など四角形を置いていくタイル技法も点描の一種と言えなくもない。
多色の色紙を千切って貼る切り絵も点描に近い。
これらの点描のスタイルにはっきりとした境界はなくても良いし、きっちり教義を持ってスタイルにこだわっても良い。
スーラによる点描の代表的な作品例
グランド・ジャッド島の日曜日の午後
点描のメリットは水彩画の様な瞬時に仕上げる技術的修得はさほど必要ではなく仕上がりを見通す計画性があればじっくりと描画に時間をかけられる点にある(もちろん絵画的素養は必要だが)。というよりも点を一つ一つ打っていくのだから時間はかかる。これは人によってはデメリットなのかもしれない。しかしコツコツ何かするのが好きな人には向いている。
そしてこれは点描の特徴なのだが、打つ点が規則的にかつ小さくなるほど時間が静止したかの様な神秘性や堅固性を感じられる絵が多い様に思われる。これは印象派から新印象派への推移の際によく言われる事である。
そして絵具等で点描により色をいくつか置いてみるとそれらの色が混色して見える。この混色は並置混色と言う。並置混色は加法混色の一種だが混ぜれば混ぜるほど混ぜた元の各色より明るくなっていくのでなく、混ぜられた色は混ぜた元の各色の中間の明るさになっていく。(なので現実の光を映像ほどに表現するには少し光が足りない)
グランド・ジャッド島の日曜日の午後(部分)
小さい画面に点描画を描くなら細い筆を用意する。大きい画面に描くなら点は離れて見られるので多少大きい筆でもかまわない。