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ファットオーバーリーンとは

ファットオーバーリーンとは油彩を描く時の技術的法則または状態を意味する用語である。
英語で、fat(脂肪)、over(〜の上に)、lean(痩せた、脂肪の無い)という事なので、油彩で言うと、油分の少ない層の上により多い油分の層を重ねよ、という事になる。つまり描き始めは乾性油は少なく、描き込むにつれて油分を増やしていく、という事になる。

何故そうするかというと、まずひとつに油分が増えてくるとその層は艶が増し光り輝き平滑になるのでその上に乗せた上層は滑りやすく剥離する恐れが徐々に増してくる。逆に言うと、油分が少ないと平滑にはならず残った顔料の凹凸の気孔により上層がその孔の穴にくさびが刺さるが如く固定されるので剥離などを起こりにくくする。

次に、油分が少ないと乾燥は速くなる。多いと遅くなる。上に絵具の層を重ねられた下の層ほど乾燥に必要な酸素が供給されづらい。もちろん普通は乾燥してから次の層を重ね塗るが、絵の完成後少なくとも半年〜一年またはもっと長期に完全乾燥までには時間がかかる。なので下の層ほど油分は少なくする必要がある。仮に下の層の油分を多くし過ぎると、下の層は乾きづらく、上の層は油分が少ない分弾力性に乏しく下の層の酸化重合の乾燥による膨張伸縮についていけず亀裂を起こす事もある。(地震の地下マグマと地上のプレートの関係性が近いイメージである)

もうひとつ、下の層に油分を吸われ艶を失うので上層ほど油分を増やす必要もある。