フィキサチーフとは、油絵具や水彩絵具の様に固化しない絵具を紙などの支持体に定着させるニスの一種である。力が加わると動いてしまう顔料+展色材(メディウム)をフィキサチーフに含まれる樹脂の固化する力で動かない様に固定させる。主に鉛筆や木炭やパステル等の湿式である粉状の絵具で効果を発揮する。その他に付着力は高いが固化しないクレヨンでも固化を代替し定着させる。
溶解し粘性や濃さを低く出来る物で、吹き付ける事が出来て、固化して皮膜を作る物であれば何でも用いられていた。
現代では使用する樹脂にはアクリル樹脂やビニル樹脂等の合成樹脂が用いられるが、古くは天然樹脂であるダンマル樹脂やマスチック樹脂やシェラック(虫の樹脂性分泌物)等が用いられた。薄め液である溶剤には滴る事で絵具に影響を及ぼさない様に瞬時に乾燥するアルコール類や石油系揮発性油を用いるのは今も昔も変わらない。
鉛筆や木炭やその他の水性絵具の物には主にアルコール類が用いられ、パステルやクレヨン用の物には染料顔料の変色防止で石油系揮発性油が用いられている。
留意する点として、フィキサチーフを吹き付ける事で定着性が高くなり絵が保護される代わりに顔料が樹脂に包まれる事により屈折が生じ本来の顔料の明るさより濡れた色になり暗く沈んで見えてしまうので薄く軽めに全体的に二、三回吹き付けながら本来の色味を保つか定着性を高めるか調整する方が良い。色落ちが気になる場合はフィキサチーフを使用せずトレーシングペーパー等の極薄の用紙を被せて保護し絵の上に重さがかからないようにする事で保存する事も出来る(クレヨンは熱にも注意要)。
吹き付ける方法として、スプレー缶の物とビン入りの物があり、
スプレー缶では換気の良い場所で缶を垂直に真っ直ぐ立てて持ち適切な距離(30cm前後)を平行に保ちながら全体に均一の量を噴霧する。 ビン入りの物は霧吹きをビンに指し息を吹き入れる事で噴霧する。