ハッチングとは、
線を、均一にまたは強弱や長短や粗密等を付けながら、平行にいくつも並べたり交差させたりと線を集積させて陰影や階調(グラデーション)の面を遠目から見た時に擬似的に線で表現する技法である。
基本的に平行に線を並べながら、均一な太さや長さや強弱の線で描くなら平坦な面を作り、規則的に徐々に変化させれば滑らかな変化のある階調を作り、不規則に変化を付ければ自然なランダムに変化のある階調を作る事が出来る。
線を平行にさらに直角に交わる様に交差させるとより面の階調を幅広く変化に富ませる事が出来る。この線を交差させながら面を表現する技法はクロスハッチングと呼ばれる。直角でなくても角度を付けてクロスさせても普通のハッチングに近しい効果のクロスハッチを得られる。
複雑に組み合わせれば階調のみならず質感や光を表現する事も出来る。面の進む方向や差し込む光の方向に沿って線を連ねると自然な描写になりやすい。
主にデッサンで木炭や鉛筆の腹を使用せず細い線のみで描く場合に用いられる事が多い。その他クレヨンやパステル等棒状の絵具でもこの技法を用いる事が多い。さらには広い塗りを可能とする油絵具やアクリル・水彩等の絵具でも部分的な細かい描写では細い筆によりハッチングを用いる事も多い。油絵具が発明される以前の速く乾いてしまい広いグラデーションが難しいフレスコやテンペラなどの絵具でもこの技法を用いる事が多かった。
時間と手間はかかるが鉛筆等の細い描画面しか持たない絵具でも液状や粉状やスプレー等の絵具を使わなければ表現出来ない様な広い面の塗りもこの技法により可能となる。
スフマートによる滑らかな階調の表現とは異なり独特な触感を視覚的に感じられるテクスチャを得る事も出来る。
目的は多少違えど漫画の技法のかけ網や集中線等の効果線もハッチングにとても近い技法でもある。