絵、というか何か写生する時は眼の使い方を変える、のは私だけなのだろうか?あまり人に聞いた事は無い。
ふだん何かものを見る時は、カメラで言う所の望遠レンズに近い比較的視野角の狭い範囲で見ていて、全体を見たと思っても、何回かその望遠レンズで見た各部分の何ショットかを脳内で全体の図として修正してまとめているに過ぎない。なので正確なスケールでとらえられず歪みが出る事も多い。意外と描いてみるとそれがはっきりする。よく注視して見たとしてもより狭い視野角で見る事になるのでさらに細かいディテールはとらえられるが全体はとらえられない事になってしまう。
なので、ものの全体図をとらえる為には広角レンズの広い視野角で一気に全体をとらえて見る必要がある。眼の視野角を広くとり、それを固定してものを見てやれば良いのである。眼の視野角最大の辺りをフレームつまり紙の端になるような感じで。
そして、
絵を描く時はそれをそれとして見てはいけない。
それとは何を指すのか。例えば「人」なら「人」であるという先入観を持ってはいけない。先入観を持ってしまうと「人」とはこういう形をしてこうなんだという思い込みだけで描いてしまう。だからよく見る為にはその物が何であるかという事は忘れてただの物体としてその形をよく見なければならない。
その物が何であるかという意味つまるところ記号性を一時的に忘れて思い込みを捨てないとその物の本当の形は見えてこない。
思い込みがあってもそれ相応には似てくるが、よりリアルに近づけようとする際にはそのような意識の転換も必要になる。
想像で描く種類の絵はその観察の堆積を活かせば良いのではあるけれど。