絵の描き方って何なのだろう。
と言うと漠然としていて、わりと語るには多過ぎる内容の様に思う。
最近は分からないが昔の私が受けた美術教育は実践のみで理論はあまり教えてくれなかった記憶がある。学校の教科書にほんのさわりくらいは書いてあったものの。当時の自分は理論や理屈を知りたかったものである、納得する為には。
実践とその指摘だけでも、天才または秀才の一を聞いて五〜十を知る事の出来る人間にはそれでも良いが、それ以下しか理解出来ないけれど絵の好きな人間は落ちこぼれてしまう事が多いとよく聞く。中学くらいから写実的技法が評価され始め、それが出来ない絵を好きな子が急に絵を嫌いになって辞めるケースは多いらしい。
もちろん実践あってこそだとは思うが、理論もある程度の年端になったのなら併せて教えても教育における感性や情緒の事を考えたとしても問題ないと考える。
そしてもし自分が教える立場だとしたら何を教えるのだろうかと考えてみた。
とりあえず一般的には、ある程度写実的に描くという事が人によっては到達点になり得るし、抽象画やデザインや漫画などのその先の段階に行くにしても、見た通りに描く方法から教えるのが良いと考える。もちろん興味を持った分野が先にあり、その為に学ぶのもありだとは思うけれど。
絵で学ぶ事はたくさんあり過ぎるが、まずは群衆を描くにしろ、モチーフを色々構成した複雑な静物画を描くにしろ、風景画を描くにしろ、何か一つの物体を描けないとはじまらない。
そのとき色付けより線で形をとらえる事がまず始まりだと考える。いわゆるデッサンである。ただ陰影は後回ししたほうが良いと思う。
線だけを用いた透視図法をベースに絵を始めるほうが写実絵の肝である遠近感を現す遠近法を理解しやすいと考えるからである。
まずその遠近法の物の見方の透視図法から始める。
そして遠近法には物体に対する視点の位置により三種類ある。その遠近法の、一点透視図(一点遠近法)、二点透視図(二点遠近法)、三点透視図(三点遠近法)を理解する。
次に陰影の付き方を学ぶ。これもいわゆるデッサンで学ぶ領域である。だがそれも遠近法を伴う法則がある。陰影の付き方による色の濃淡でも距離感・空気感も表す事が出来るので空気遠近法とも呼ぶ。
そして彩色の段階となる。彩色も遠近法を伴いながらその法則がある。彩色は常に陰影と共にある。
こうしてまずはひとつの物体を描く事が出来る。あとはその物体の集合体であり応用となる。その後に構図や配色や絵の意味性・物語性そして様々な技法などの芸術性や各知識を加味しながらひとつの作品を完成させるに至る事を覚えながら描いていくのが教える道筋としては良いのではないだろうか。 まずは描ける喜びを知るというのが第一歩かと考える。
各種画材の使い方はまた個別で、その描く対象の物の見方を覚えれば共通して、他の画材でもその画材を練習する事により、あらゆる物を描くのに応用出来る。