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世界一高い絵の具ラピスラズリ(真正ウルトラマリンブルー)について

今まで見た中で一番価格が高い絵具、それはblockx社から発売されている天然のウルトラマリンブルーの油絵具である。20gの小さいチューブの物で127€(ユーロ)で日本円にして約16,500円である。カタログ(web版)の使用顔料については lapis lazuli superior quality とは記載されている。この顔料による絵具はフェルメールが「真珠の耳飾りの少女」の少女の青いターバンに使用した高価な絵具として有名である。絵具の価格の高低は使用されている顔料の種類(又はその質や量等)で決まるので高価格の理由はやはり使用されている顔料である天然のウルトラマリンブルー顔料のラピスラズリであるからであろう。

ラピスラズリとは青い鉱石である天藍石またはラズライトが元となる。それらは初め宝石として知られ、中世にはラピスラズリ又は瑠璃と呼ばれる。元々は宝石として用いられていたが6、7世紀より顔料として使われ始めると伝えられる。東方や中東近辺のオリエント地方よりイタリアのヴェネツィアを経てヨーロッパへ。その様な長い航海を経て渡って来た事が名前の冠であるウルトラマリンの由来とされる。ヨーロッパでは12、13世紀頃に原石からの生成技術が起こったようである。とても高価で当時は同量の金と売買取引されていた。19世紀になると安価な人工のウルトラマリンブルーが製造され始める。

性質としては、人工より天然の物の方がやや透明で、透明色となる。透明性が高いので厚塗りには向かず透明に薄く重ねる技法に向いている。屈折率が低いのでテンペラや水彩の方が油より色が明るく鮮やかになる。ウルトラマリン疾病と言い、酸に対して弱く灰白色に変色する。ウルトラマリンブルー中の遊離硫黄は鉛や銅を含む顔料を黒色化させる。しかし耐光性はとても強い。耐アルカリ性も強い。

古代の絵画こと油絵においては鉛白が主流であったので白と混ぜる時には鉛白には混ぜずに亜鉛華白と混ぜていたのだろうか。仮に鉛白と混ぜても高温多湿でなければ特に化学変化は起こっていないと文献にもあるので描画の際の正しい画材の用い方でニスをしっかりと塗り適切に保存すれば極端に黒変化を恐れる必要はない様である。

あとは同社の天然のバーミリオンが同じくらい高かったのを覚えてる。

追記 シュミンケのムッシーニ油絵具のラピスラズリ35ml ¥12,960が1ml辺りの価格でブロックスの物より高いのを発見した。ただし数年前に300本の限定販売の物ではあるが。最近では他にも最近日本の絵具メーカーのホルベインによる透明水彩絵具用で本瑠璃(ラピスラズリ)を使用した絵具が少量ながら五万円前後する物が発売された。同じく日本メーカーのクサカベのミノー油絵具シリーズにおいてもラピスラズリによる油絵具がお手頃な価格の数千円程で発売されており、また同メーカーの天然原料油絵具GEMシリーズでも一万数千円ほどで発売されている模様。blockxのラピスラズリとバーミリオンの油絵具は公式サイトではサイトの改修に伴い見つける事が出来なくなってしまったが日本での取扱店の京都の画材店の画箋堂のオンラインショップでも確認出来る。

※その他の顔料に関するトピックはカテゴリ一覧の"水性絵具・他画材"のページの"顔料"の項より御参照下さい。