16世紀オランダの古代より小型の油彩画の支持体に銅板が使用されていた様に古くから金属は絵画の支持体として用いられていた。
金属の様な表面がつるつるした平滑な物に基本的には絵は描けない(絵具は置けない)。絵を描けたとしてもそれは一時的に絵具自体の付着力でその表面に張り付いているだけなのだからその実脆い。木炭やパステル等の付着力の無い粉状の絵具でガラス等つるつるすべすべした物に描いてみれば粉がさらさらと自身で勝手に落ちるか一擦りしてみれば一拭き出来るのでそれはよく分かる。
基本的に絵具が紙やキャンバス等の支持体に定着する仕組みは支持体の細かい凹凸もしくは支持体表面上の支持体内部に毛細血管の様に根を伸ばすが如き細かい孔と呼ばれる穴に絵具が鎹(かすがい)もしくは楔(くさび)が嵌る様に浸透して固まる事により強く接合する事を言う。しかしガラスや金属の様に表面に細かい凹凸や孔が無いのでそれは望めなく、絵具の付着力が無くなったり重力に耐えられなくなったりすれば自然に剥落したり亀裂が走ったりする。
なので金属の様な平滑な支持体に絵具を塗る場合には絵具と支持体の間に接着力に特化した油溶性のアクリル樹脂を用いたメタルプライマーという下地剤の塗布を挟む必要がある(もしくは何らかの絶縁体を)。基本接着力の高いアクリル絵具であってもプライマーを使用しないとその定着力は悪い(同じアクリル樹脂と言っても合成の仕方次第で用途は違うので)。
塗布する手順としては、
金属の表面の金属以外の部分と汚れや油分や錆びやほこりなどのゴミの付着物を取り払い綺麗にしてから何度かプライマーを塗布する。シンナー等の揮発性溶剤で薄めてスプレー掛けすると均一に塗布しやすい。塗布前の下処理にサンドペーパーによるやすり掛けが必要な金属もある(鉄・真鍮・ブリキ等)。数時間乾燥させてから後に、さらに定着を良くする為にジェッソを塗布しても良い。尚、プライマーの扱いは油溶性アクリル絵具に準ずる。揮発性溶剤をしているので常に換気には注意する。プライマー及びジェッソが絶縁体になるとは思うが上に乗せる絵具と金属の化学反応による影響は考慮しておいた方が良い。