絵具の混色できれいな色を作るには、出来るだけ鮮やかさの度合いである彩度を落とさない(=最も彩度の低い無彩色にしない)、つまり色味を失わせ灰色にしない様に、色を"濁らせない"事が大切である(濁った色も中間色として重宝するのできれいでない色も大切ではあるものの)。
絵具は、現実に見ている色やモニター等のディスプレイの色の様な混ぜれば混ぜるほど明るくなる光の三原色による加法混色ではなく、減法混色と呼ばれる混ぜ合わせると彩度が低くなる(単一顔料で作られている同色と比較した場合に)画材なので本当は混ぜないで使う方が最も明るさや鮮やかさを保つ事が出来る。
混ぜないで使う場合はモネやルノワールらの印象派またはスーラの新印象派の画家達による絵画の様に鮮やかな複数の色の点を画面に置いて視覚上で混色させ(たかの様に見せ)る点描による並置混色か、
ゴッホやゴーギャンの後期印象派またはマチスの野獣派(フォービズム)の画家達による絵画の様に現実の色を無視して原色そのままの色で色面を埋め尽くすくらいしか無い。
あとは並置混色の応用で色付きのハッチングの線を細かく並べるか又は交差(クロスハッチング又はかけ網)させて視覚上で混色させるか、
または古典的な技法である透明色を薄塗りするグレーズ(グラシ)で原色の鮮やかな透明色を下の色と重ねて重色混色させるくらいだろうか。
とはいえ全く(物理的に混ぜ合わせる)混色をしないで絵具を使うのは絵を描く上でいささか不自由さも伴うので、きれいに混色させる方法を理解しながらきれいな色と濁った色を使い分ける事が出来る様になる事が望ましいと考える。
その上で、
きれいに混色するにはまずは、
・色相環上での近い色同士で混色する
同程度の彩度(主に原色や純色)の各色相を円状に並べた図を色相環と呼び、その色相環上で例えば黄色なら近くに位置する赤や緑を混ぜると濁りの少ない色である橙色や黄緑を混色で作る事が出来る。逆に遠くの反対側に位置する補色と呼ばれる関係性にある青紫や赤紫を混ぜると色が強く濁り暗い灰色になるので遠くに位置する色は混ぜない。
色相環の図
・白や黒を使わない
白濁という言葉がある様に白は無彩色なので混色に用いると明るく淡い色にするがその分だけ彩度も落とす。黒も混ぜるとその分だけ彩度を落とし黄色や橙色等の明るい色と混ぜると墨を混ぜた様な強い濁りを生じる。そして白と黒が混ざると最大の濁りである完全な無彩色の灰色が生じる(例えば黄色と青で作った緑色を白で淡くした後に暗くする為に黒を加えたりしても白と黒がぶつかい合う)。
とは言っても絵を描く上で淡い色や暗い(又は黒い)色を使わないわけにもいかないので、白や黒を混色で使うべき所(鮮やかさの必要無い)には使い、使うべきでない所(鮮やかさの必要な色)には使わない様に見極めたい。同時に白と黒をぶつけない様にもする。灰色(に近い中間色)を作るにしても補色の関係にある色同士を混ぜる方が自然に存在する灰色に近い比較的濁りの少ない澄んだ色味を持った灰色を作る事が出来る。
・透明色で混色する
不透明色より透明色で混色すると濁りによる彩度の低下を抑えやすい。透明色は、濁りの素となる含む顔料が少ないからなのか、または絵具(=顔料とメディウム)を透過して下地から反射する混ぜ合わせた複数の顔料それぞれから反射される色光が重色による混色や加法混色に近い状態になるからか、はたまた不透明色の様には表面での光の乱反射で白っぽくならず明度も上がらずその分だけ彩度を保つ為か、それらが原因かは分からないが透明度が高いと同じ色でも混色における濁りの度合いは低く見て取れる。透明なメディウムを加えられる絵の具であれば透明度を変えつつ混色してみる事でその効果を知る事が出来る。同じ水彩でも透明水彩と不透明水彩では透明水彩の方が濁りの少ない澄んだ色を保ちやすいのは不透明水彩を不透明たらしめる白色顔料である体質顔料があまり入っていないのと透明水彩自体が透明性を保つ為に絵具のパレットに白(と黒)を使わない事に起因する様に考えられる。
・何色も混ぜない
多くの色相を混ぜると明度も暗くなりがちで(といっても黒にはならないが)彩度も落ちるので、何色も色は混ぜない。大体の場合において、任意の基本的な有彩色の二色か三色の掛け合わせ(またはそれに加えて白、黒、茶系統の色のいずれか一色)で最小限の手数で大体の混色は行う事が出来る。
例えば、黄色と青の混色で作った緑に、白を加えていけば淡い緑色に、補色である赤や赤系統の暗色を加えていけば暗い緑色になる。白と補色を同時に加えていくと灰色みを帯びた中間色になっていく(この場合は黄色を混色のベースに使用しているので黒を使用しない)。逆に黒を使用する場合は白や明るい色である黄色、黄緑、橙色を使用していない単一顔料による原色の赤や青や紫色又は暗色に混色すると濁りの少ない澄んだ暗色を作りやすい。
この四点を押さえて使い分ける事が出来れば混色による色作りを自在に行う事が出来ると考える。