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アウトサイダーアートとは

あまり一般的には広く知られていないがアートのカテゴリーのひとつにアウトサイダーアートというジャンルのアートがある。

アウトサイダーアートとは芸術における専門のアカデミックな教育を受けずその分野の知識や技術を持たない(または影響を全く受けていない)作り手によるアート作品及びその行為であるとされる。この基準では、古くは徒弟制度、現代では美術or芸術系の高校・専門学校・大学・大学院でその課程を修める者は当てはまらず、それら履修者による個人指導や指導書や作品から(アカデミックな要素を)学んだ者も該当しないとされる(小・中・高等学校における図工や美術の教育課程も当てはまる場合もあるが厳密には定義が曖昧な様である)。

outsider artを直訳すると"外部の人の芸術"となる。専門家または専門的知識・技術を有する一般人は"外部の人"と対である"内部の人"となり、そうでない人が"外部の人"となる。

アウトサイダーアートという名称自体は比較的最近の二十世紀末に提唱され、少々時代を遡ると精神病者らによるアート作品に見られるこれまでの芸術の既成概念を覆す飛び抜けた芸術性に注目した二十世紀中期フランスのアンフォルメル(非定形)をモチーフとした抽象表現主義の画家ジャン・デュビュッフェによってフランス語で"生(なま)の芸術"を意味するアール・ブリュット(art brut)という名称が提唱されている。

さらにピカソやマティスが現代美術のアートシーンで活躍していた同じ二十世紀前期には、アウトサイダーアートの始祖とも言うべき元々は税関吏の職に就いていて四十歳頃から本格的に独学で絵を描き始めたアンリ・ルソーに代表されるその時代には職業画家にとって正規とされていたアカデミー(美術学校)の芸術教育を受けていない全くの門外漢とされていた画家たちを素朴派(ナイーブ派)と呼びナイーブアートという美術運動の一つとして美術史に刻まれている。

既成概念を打ち破る事を近代のアートが命題とする様になって後、既定路線から外れ難い常識の芸術の枠内にいる専門家には作り難い新たな芸術性を持つ芸術界と最初から全く関わりを持たず独自に制作を推し進めているアウトサイダーアートの芸術家たちに注目が集まったのが彼らが世に見出された発端となる(二十世紀より以前のそれまでは注文に応じて卓越した技術で様式が確立された規格に沿った作品を作れば良い事が多く専門化された職業として作り手側も受け手側も専門家による聖域と認識していた)。

アウトサイダーアートの作品の特徴の傾向として、作風は流派や流行等の決まった型は無いので個人によって千差万別ではあるが、イメージの再現が多く模様や形や色の繰り返し・積み重ね等の反復性がしばしば見られる様である。とりわけ絵画においては、正確な遠近法や克明な明暗の陰影により三次元を二次元の平面に再構築する立体的写実描写や伝統的な構図法や色彩の効果的な配色技法はアカデミックな教育により授けられる手法でありアウトサイダーアートの趣旨に反するので、必然的に元々本来二次元である絵画の要素であるはっきりとした輪郭線や色彩本来の色をそのまま表せる平坦な平面構成から成る傾向が強く見られる(記憶に残る映像を写真の様に忠実に再現する能力者も稀にいるが立体の平面への再構築とはまた異なる平面性を持つ様に見られる、また独自のやり方で平面に立体感を構築する場合も見られる)。用いる画材については水彩絵具や油彩絵具や粘土等の伝統的なものからコラージュ(貼付け技法)やアッサンブラージュ(立体の寄せ集め)や現代アートで用いそうな素材を絵具や造形素材として用いる事も多く見られる。