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フタロシアニンブルー・フタロシアニングリーンについて

フタロシアニン系顔料は二十世紀前半に開発された新しい顔料であり他の顔料を混ぜない単一顔料ではフタロシアニンブルー(PB15,16)やフタロシアニングリーン(PG7)として一般的に総称され青色や緑色の顔料として用いられる。

顔料の種類の区分では、土性系顔料等の天然無機顔料や金属系顔料等の合成無機顔料や動植物等から成る天然有機顔料または染料のそれらとは異なる、化学元素の化合から成る合成有機顔料である。
フタロシアニン系顔料はその合成有機顔料の中では赤・紫系の色を持つキナクリドン顔料(PR122,Pv19)と同じく堅牢性のとても高い顔料および絵具である。

この顔料は主に銅フタロシアニン(C₃₂H₁₈N₈)と呼ばれる有機合成による化合物から成る。赤みの無い純粋な青色または青緑や純粋な緑色がこの顔料からは作られる(純粋な青色は色料の三原色の一つである青色のシアンと極めて近い色になる)。

この顔料および絵具の特徴は透明度がとても高く有機顔料の特徴である強い着色力でその中でも特に強い。単一顔料での絵具の使用では透明度が高くメディウムに浸けると濡れ色の暗色になるので厚く塗ると黒に近いほどの暗色になる。その反対に薄塗りするとその極めて高い透明度で地を透かした反射光が明るく白いほど本来の色の鮮やかさを見せる。または市販されている複数の顔料で調色した絵具の様に、白やその他の色と調色して淡い不透明な色や微妙なニュアンスの色の絵具を作るのに用いられる。

フタロシアニンブルーは暗色として用いるなら赤みの少ない暗い青色のプルシャンブルー(PB27)に近く、明色・淡色として用いるなら青緑の色味を持つマンガニーズブルー(PB33)やセルリアンブルー(PB35)の色味に近い。フタロシアニングリーンも透明度や色味が近い深く鮮やかな緑色のビリジャン(PB18)にとても近い色である。若干合成無機顔料の同じ青や緑より耐光性は劣るものの比較的安価な顔料である為に、調色による代替品に用いられたり、欠点となる問題のある(毒性・変色等)顔料や廃番になってしまった顔料に代えて用いられる事もある。代替的な用途以外にも無機顔料には無い色の鮮やかさを活かした現代的な色彩の絵具としてもその魅力は高い。

油絵具のフタロシアニングリーンとフタロシアニンブルーの緑色と青色
油絵具での両色

油絵具やアクリル絵具や水彩やその他の洋画材で用いられるがフタロシアニン系絵具の特性はどの画材でも変わらずほとんどそのまま表れている(不透明絵具ではその透明性は白や体質顔料等で打ち消されるが)。油絵具にした場合は有機顔料では吸油量が多くなるので乾燥が遅くなりがちで油分が多い部類の絵具になる。

耐光性・耐候性・耐熱性・耐酸性・耐アルカリ性・耐溶剤及び耐水性等の点でも堅牢性のとても高い顔料である。毒性も少なく不活性な顔料なので気候や化学反応による変色の心配も少ないので安全性の高い顔料でもある。

※その他の顔料に関するトピックはカテゴリ別一覧の"その他の絵具・画材"のページの"顔料"の項より御参照下さい。