肖像画や似顔絵とはどちらも主に現実に存在するもしくは存在した人物(又は動物等)の顔や腰または胸より上のバストアップの人物像を描いた絵の事を言う(肖像画においては全身描かれたものもあるがどちらかと言えば人物画とも区分される)。
肖像画と似顔絵はとても似ているが非なる物でもあり得て、用いられる用語の意味においても画風においても若干異なる事もある。
どこで肖像画と似顔絵を区別するのかや用語の意味するニュアンスはあくまで日本語なので国や時代で世界的に明確に定義されるほどにははっきりとはしていない(不勉強で私が知らないだけかもしれないが)。
英語やフランス語ではportraitが大きな括りで似顔絵と肖像画の両者を一語で意味する。言葉で言うと外国語の数だけ相当する用語があるのだろうけど、アトリエでより本格的に時間を掛けて緻密に入念に下描きを重ねて現実に忠実に製作される本画とスケッチ的なライトな仕上がり(に見える)の絵の様なニュアンスの違いの概念は世界的に共通している様に見られる。他にカリカチュア(戯画)という特定の人物を風刺画的にデフォルメする似顔絵のジャンルもある。
とりわけ近代〜現代の日本においては、
肖像画とは油絵具(又はアクリル絵具等)でキャンバスや板パネル(あるいは紙)に色と形を正確に取り写真の様に現実に忠実に描かれた絵を指す事が多い(江戸時代末期や明治大正時代の近代化以前の過去においては日本画用絵具で紙や絹等に描かれた肉筆画が近い)。その様な絵では濃厚な現実の色彩に酷似する描写を求められるので厚塗りの出来る不透明な絵具がよく用いられる。古来から西洋にある油絵具と豪奢な額縁による肖像画の重厚なイメージをそのまま引き継いでいる。
似顔絵はその語が指す範囲は広く肖像画を似顔絵と呼ぶ人も少なく無く一般的には肖像画よりカジュアルな意味合いでも使われる。絵具を問わず重厚で緻密というよりスケッチ的に即興的にあっさりとライトな仕上がりに見える様に描かれた絵が似顔絵という語が指すニュアンスに近い。使われる絵具は透明水彩やマーカーやエアブラシや色鉛筆やクレヨンやパステル等と多く、または油絵具やアクリル絵具で印象派の様に一気に描き上げてしまうスケッチ的な技法で描かれた絵も肖像画とも呼べるし似顔絵の持つニュアンスにも近い。近年ではCGで描かれた絵もこの似顔絵の領域に含んで良いと考えられる。色や形を正確に描いたリアル志向な似顔絵からデフォルメしてコミカルにした似顔絵など幅広く、絵画からイラストや漫画と似顔絵の跨ぐジャンルの領域は広い。