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キナクリドンマゼンダについて

19世紀半ばマゼンダ(magenta)は耐光性の弱い染料で作られており20世紀中頃から耐久性の高いキナクリドン系の赤紫顔料に多くの絵具で置き換わる。キナクリドンマゼンダは赤紫色の色みを持つ彩度の高い鮮やかな色である。和名では唐紅とされる。赤みを強く帯びた紫色で薄めると濁りの少ない(黄みを含む桃色とはまた異なる)鮮やかなピンク色に調色する事も出来る色である。そして色彩の基本的な混色方法の一つである減法混色における色料の三原色(CMY = シアン,マゼンダ,イエロー)のマゼンダの色に最も近い顔料である。

キナクリドンマゼンダはアメリカやイギリスの色料の規格であるC.I.Name(カラーインデックス名)ではPigment RedのPR122となる。顔料区分の分類では合成有機顔料となる。組成の構造や粒子の大きさにより赤から紫にかけて色みが異なる。

絵具化した顔料の性質は、合成有機顔料としての特徴が顕著に表れていて、透明度が高く着色力もとても強く油絵具においては多い吸油量により乾燥がやや遅い絵具となる。耐光性(紫外線による色褪せに対する強度)は無機顔料に劣るものの耐候性(熱や水分や有害な大気等による変色や破壊に対する強度)も含めた堅牢性においては総合的に評価して決して劣る物ではなく工業用途にも用いられる位に優れていて、化学反応を起こしにくい不活性さを持つので他の色との混色制限も無く毒性も無くどの種類の絵具においても汎用的に広く使用されている。同じ赤や紫の無機顔料に比べて比較的安価でありコストパフォーマンスも良い部類の顔料及び絵具でもある。

描画の用途としては、その高い透明性で透明絵具としての使用に向いていて仕上げの上塗りに用いやすくグレージングの薄塗り技法に適している。または白などの不透明な色と混色したり厚塗りして不透明性を出したりも可能である。またこの顔料にしか作れない鮮やかな色彩での用途もある。