dorayakiBlog

赤色黄土(レッドオーカー)について

赤色黄土と呼ばれるレッドオーカーは他にもベンガラ、テラローザ、ベネチアンレッド、ライトレッド、インディアンレッド、マルスレッド、、トスカーナレッド、酸化鉄赤等の名称を持つ。由来となった原初の産地名を呼称に持つ名称も多く、またこの土性顔料は原料の成分の濃度や化合(加熱や酸化)の具合により色みや明るさが黄〜暗褐色または黒色まで幅広く異なる。元々、土や岩や鉱石等の自然に存在する物質なので文化を問わず古代より世界中で広く使用されてきた。

レッドオーカーは主に酸化鉄である第二酸化鉄(Fe₂O₃)から成り、炭酸カルシウム等も含まれる。それは含水の黄土を焼成した形を取っている。また自然の鉱床から産出され加工された天然物と同じ組成を化学的に化合で作る合成物がある。アメリカやイギリスの色料の規格であるC.I.Name(カラーインデックス名)ではPigment RedのPR101(合成)及びPR102(天然)である。顔料区分の分類では土性系顔料である赤色黄土は天然無機顔料と区分される。

レッドオーカーについて言えば、その色合いは赤みがかった黄土色から暗く沈み紫みを帯びた赤褐色まで化合の度合いにより異なるが、一般的には原色の赤や朱色を少し明度と彩度を落としたレンガの様な色が代表的な色である。茶色と捉える事も出来るが明度と彩度が高いので赤としても捉える事が出来る。白と混色するとコーラルピンク(さんご色)に近いピンク色にもなり、透明なメディウムを加えて透明色にしてグレーズ(薄塗り)すると深みのある橙みを帯びた深い赤になる。色から受けるイメージとしては南欧の暖かい風土や火山地帯にある様な力強い熱気を感じさせる色である様に感じられる。

性質としては、不透明性が高く着色力も高く下地の色を塗り潰す被覆力も高い。乾燥の遅い油絵具においても乾燥性の良い絵具となる。天然無機顔料に多く見られる耐久性の高さもあり、耐光性(紫外線による色褪せに対する強度)や耐候性(水分や有害な大気等による変色や破壊に対する強度)も全色の中でもとても高い(極度の高熱には反応あり)。耐アルカリ性にも優れ(強い酸性には敏感)、化学反応を起こしにくい不活性さを持つので他の色との混色制限も無く、毒性も無く、どの種類の絵具においても汎用的に広く使用されている。最も安価な部類の顔料及び絵具でもある。

描画の用途としては、原材料の入手しやすさや製造しやすさから洋の東西を問わず世界的に最も古い有史より使われてきたとされる。どの絵具においても汎用的に使用出来る顔料であり、下地塗りから上塗りまで使用出来るので、絵画技術において重要な赤色または茶色絵具の一つであった。故に古典的な色調の作品や茶系統色の単色画では特に使用される割合が高い。油絵やテンペラやアクリル絵具等の重ね塗りする事の多い絵具の技法では白や黄土や赤色黄土やその他土性系の褐色の茶系統色で下地を施し下描きもしつつ上層に塗る鮮やかな有彩色に陰影や深みや温かみを与える為の下地に欠かせない色の一つとしても古来(赤褐色等は特にバロック期から)より用いられている。その効果から人物画の下地に血色を表現する為に多く用いられ、風景画においても空や水の青や自然の緑を上塗りの隙間から覗く又は透過して際立たせる色として多く使用される。現代的な絵においても、使用の上層か下地かを問わずナチュラルな自然の雰囲気で親しみを覚えやすいアースカラーや微妙なニュアンスを伝える渋い色を持つ絵具として今もなお多くの技法や場面において使用する事の出来る重要な顔料及び絵具である。