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セピアという色と絵具と顔料について

セピアと言えば写真で色素が褪色して出来る茶褐色の明暗によるモノクロ調のイメージが強い。単色の色彩としては黄みまたは赤みを帯びた茶褐色を指す事が一般的には多い。絵具としては18世紀以前からある同じ様な暗茶褐色の色調を持つビスタに代わり18世紀以降からはセピアが西洋において筆記用具のインクまたは水彩画のデッサン(単色画)等によく用いられ始めたという説が有力の様である。

セピアの顔料及び絵具は、烏賊(一般的な甲イカ等)が外敵による危機や獲物の捕食に際して発射する黒い分泌液を作る内臓器官の墨汁嚢(タコやイカが持つ墨袋)を切り取り加工され作られる。原料をそのまま乾燥させて細かく砕いて使うか薬品で溶解し濾過して沈殿した顔料成分を乾燥させて使用する。成分はメラニンを主な色素とする。独特の不快な魚の様な臭気を持つ。

絵具としての性質として、耐候性(熱や水分や有害な大気等による変色や破壊に対する強度)は弱くないが強い日光により特に薄塗りの部分において本来の黒ずんだ赤み帯びた暗褐色から私たちがよくイメージする茶褐色のセピア調に褐変し褪色する点から耐光性(紫外線による色褪せに対する強度)が必ずしも良いとはされない。アルカリに溶解し酸には沈澱や褪色の反応を示し水や有機溶剤には不溶とされる。

用途としては、アラビアゴムの展色材(メディウム)で顔料を練って水彩絵具として又は卵を使用するテンペラの様な水性絵具として使用されていた。現代では先に述べた変色や臭気の為か骨炭(アイボリーブラック)と天然土性系茶褐色顔料との混色で調色されて置き換えられている。またその独特の美しい暗褐色の色調の為に乾性油を展色材に用いる油絵具においても同様に黒と茶褐色との顔料による調色品がセピアと銘打たれ油絵具にも導入されている事もある。