液状タイプの油彩用の速乾メディウムは揮発性溶剤と乾性油をメインに樹脂と乾燥促進剤を調整したい乾燥速度に応じて多めに加えて作られている。多めに加えられた樹脂と乾燥促進剤は溶剤が揮発し乾性油が徐々にゆっくり表面から内部へと乾燥するメカニズムを助ける。樹脂とコバルト&マンガン系の乾燥促進剤が絵具の表面から急速に、鉛系の乾燥促進剤が絵具の内部からゆっくりと乾燥を促し数ヶ月掛けて完全乾燥へと進んでいく。速乾メディウムは適量混ぜれば一日〜数日で指で絵具に触っても動かない指触乾燥する程度に乾く。
これは樹脂が急速に乾き乾性油の代わりに皮膜を形成する性質が使われている。樹脂が先に乾き内部で乾性油はゆっくり乾く仮初(かりそめ)の乾燥つまり指触乾燥を果たす。
ダンマル樹脂等の各種古典的な天然樹脂や現代の合成樹脂が使用される。その中で多く見かけられるのが乾性油から製造される合成樹脂であるアルキド樹脂である。基本的な樹脂は通常は溶剤が揮発するとほぼ完全に乾燥し固化するがアルキド樹脂は溶剤が揮発しても粘性が高くなりある程度固化するが完全乾燥までには(乾性油よりは速いが)ゆっくり時間をかけて乾性油の様に化学的に酸化重合し乾燥していく。乾性油と合成樹脂の性質を併せ持つだけにその耐久性も諸々の天然樹脂と比較して柔軟性や硬さや黄変への抵抗性も幅広く強い。
さらには半日〜一日または物によっては数分から数十分で指触乾燥する「超」速乾メディウムもある。これもアルキド樹脂(又は稀にアクリル樹脂)を使用した物で乾性油は不使用でアルキド樹脂とごく少量の溶剤および強力な乾燥促進剤や練りの硬さや艶の具合を調整する体質顔料等を使用しているチューブ入りの絵具状の硬練りのメディウムである。体感としてはアクリル絵具よりは若干余裕を以って遅く乾く位には速い。当然油絵具より圧倒的に速い。用途としては主に速く乾かしたい下地作り、制限時間のある受験時の製作、速描きの画風の作品作り、納期の速い仕事等に使われる様である。
国内メーカーでは、ホルベインのラピッドメディウムやストロングメディウム、クサカベの超速乾メディウム等が販売されている。
メディウム自体は黄色透明体の物が多く、油絵具より少し軟らかいゼリー状の硬練り、半透明から高い透明度の物や艶消しタイプから強い光沢の物があり各種用途に様々に調整されている。特に油絵具に混ぜる量の制限も無いので使いやすいのも特徴的である。厚塗りするならこのメディウムも適しているし入れた方が耐久性や乾燥に優れる。ただし乾燥が速くなると言っても厚く塗れば塗るほど乾くのが遅くなるのは変わらないので重ね塗りするなら下の層が乾燥の際に起こる膨張・収縮で上の層に影響を及ぼさない程度に乾くのをしっかり待つ必要は従来の油絵具の使い方と変わらない。