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テンペラ絵具とは

テンペラとは:
テンペラとは西洋において油を媒剤とした油絵具が登場する以前は広義に様々な水性絵具の事を指す言葉であった。膠や卵やカゼインやゴム等の様々な媒剤の水性絵具が総称してテンペラと呼ばれていた。この意味でのテンペラでは古代から絵画や挿絵や装飾や筆記等の様々な用途に幅広く用いられていた。油をメディウムとした絵具や塗料が発明され普及した後の時代では特にルネサンス〜近代〜現代に至っては主に卵を使用した物がテンペラと呼び称される様になる。古くはヴィーナスの誕生などの絵画で知られるボッティチェリに代表されるテンペラ絵具だけで仕上げられた絵画も多くまた油絵の古典的技法としても下絵に多く用いられる。

卵テンペラについて:
いわゆる卵テンペラは卵の主に鶏卵の黄身を使用した物、白身を使用した物、または黄身と白身の両方を使用した物、つまり卵黄・卵白のいずれか又はその両方を使用した物がある。そして卵+油(または樹脂溶液または油と樹脂溶液の混合液)+水を瓶等の容器の中で振り動かし撹拌し混ぜ合わせ出来上がったテンペラ用メディウムで顔料を練って絵具状にし描画に際し水(または油)で溶いて使用する。

卵テンペラの種類:
卵からは三種のテンペラが出来上がる。水性のテンペラと油性のテンペラと卵白によるテンペラがある。
・水性のテンペラ
水性のテンペラはいわゆる一般的に世間で言われているテンペラで水で溶いて使うタイプのテンペラである。伝統的な処方では一個の卵と等量の乾性油または樹脂溶液または乾性油+樹脂溶液の混合液と等量〜三倍量までの水を卵→油→水の順で撹拌し混ぜ合わせて顔料を練る為のメディウムとする(比率→卵:油:水=1:1:1~3)。卵黄のみを用いる場合は乾性油(または樹脂溶液及び油と樹脂の混合液)と水の総量を卵の大きさ一個分と等量にはなる位の量で調合する。乾性油は亜麻仁油等の生油かスタンドオイル等の様な加工油を用い、樹脂は濃度高めにテレピンで溶かされたダンマル樹脂が適している。もしも腐敗を防ぎたいならば防腐剤としアルコールを少量加えるのが良いとされる。この水性テンペラは油分が少なめで(特に油でなく樹脂のみを用いた場合は)いわゆる一般的なテンペラ絵具の特徴である落ち着いたつや消しの比較的不透明な明るい色調になる。含まれる油自体は完全に乾くのに数日かかるが水分が乾けばすぐに重ね塗りする事が出来る。
・油性テンペラ
油性のテンペラはテンペラ中の水分を極力減らし混ぜる油分を多く保てば水性テンペラの様な水では溶く事が出来ないが油や揮発性油や揮発性油に溶かした樹脂溶液で混ぜ溶く事の出来るテンペラが出来上がる。しかし油や樹脂により光沢や透明性が増す事と乾燥は油絵具よりは速いが水性テンペラより緩やかに遅く乾く事になるだけで油絵具と似た性能になるのでそこまで油性のテンペラを用いるメリットがあるとは感じられない。稀に非乾燥の状態でも凝固する事もある様でもある。現代の技法でこの絵具の使用はほぼ聞いた事がない。
・卵白によるテンペラ
卵白によるテンペラは文字通り卵の卵白のみをメディウムとし顔料と練り合わせて作る絵具である。卵白に微量の乳化(中和)作用もあるのか油や樹脂と又はゴム等を加える処方もある。卵黄の含まれる物と比べて油分が少なく脱脂性のつや消しのとても明るい色の水性絵具となる。卵白中の固着成分(と加えた油や樹脂やゴム等)により固まる。使いやすい無色透明な色のメディウムであるが乾いても他のテンペラよりも脆い皮膜になる。

テンペラの性質や特徴:
テンペラは性質としては卵黄に含まれる油及び加えられる油や樹脂により乾いたその皮膜は耐久性がとても強くしなやかになり耐水/耐油性となる。卵黄の黄色い色は乾燥と共に目立たなくなる。水分の蒸発(と揮発性油の揮発)を伴い次いで油分の硬化を待つ。卵黄に(又は卵白に極く微量)含まれる成分のレシチンが界面活性剤の役割を果たし水と油の中和・混濁を可能としている。油絵との併用でも下描きはもちろん上描きも可能である。なお硫黄分を含むカドミウム系顔料やウルトラマリンブルー等の顔料を卵テンペラに混ぜると化学変化を起こし分解・変色を起こすのでテンペラには用いる事は出来ない。

テンペラの仕上げの処方:
仕上げのニスは通常の艶出しニスでも塗布出来るがテンペラの持つ特徴のつや消しまたは半つや消しの落ち着いた光沢による明るい色調を保ち活かすなら蝋や樹脂+シリカを用いたつや消しのニスを塗布した方がテンペラ絵画としては向いている。

市販のテンペラ絵具について:
卵テンペラは身近な材料で比較的容易に作る事が出来るものの腐敗により長期の保存が容易ではないのでなるべく新鮮なうちに使わなければならなく使用の都度練り合わせる必要があるので、デーラー・ラウニー社より日本でも市販されている卵黄とリンシードオイルで練られたチューブ型のテンペラ絵具もあるので手軽に本格的なテンペラを描く事も出来る。国内絵具メーカーのホルベインからも卵と顔料を用意すれば自作出来るテンペラメディウムが発売されている。


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