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テールベルト(緑土)とは

テールヴェルト(terre verte)という顔料には他にも緑土やGreen Earth等の名称もある。その色彩は顔料の産出地方によりその緑色の色調に異なりがあるものの名前の通りに彩度が低く灰色がかった土色に近い中間色調の緑色である(またはオリーブ調な黄緑色や灰色に近い緑色)。古代〜中世の時代のローマ等のヨーロッパの古典絵画において用いられ続けている。イタリアのヴェローナが良質な産地としてよく知られ現在のチェコ共和国のボヘミアではオリーブ調の物が産出され他にもキプロス共和国のキプロス島やドイツも産地として知られる。

テールヴェルトは粘土質の珪酸鉄(珪酸+酸化鉄+カルシウム+マグネシウム)から成る天然土性系顔料である。アメリカやイギリスの色料の規格であるC.I.Name(カラーインデックス名)ではPigment GreenのPG23である。顔料の分類としては天然無機顔料に区分される。

絵具化した顔料の性質として、着色力は強くなく、水性絵具では不透明性の高い明るい色調になり油絵具の様な油性絵具では透明性を帯びた暗く沈んだ色調になる。耐光性(紫外線による色褪せに対する強度)や耐候性(熱や水分や有害な大気等による変色や破壊に対する強度)は全色において最高クラスの堅牢性である。耐酸性や耐アルカリ性にも優れ化学反応を起こしにくい不活性さを持つので他の色の絵具との混色制限も無く毒性も無いので多くの種類の絵具において広く使用されている。

描画の用途としては、原材料の入手及び製造のしやすさから西洋において古い有史より使われ(耐アルカリ性もあるのでフレスコによる壁画等にも)、単体の色彩としてもナチュラルな自然の雰囲気の親しみを覚えやすいアースカラーでもあり微妙なニュアンスを伝える渋い中間色調の色みでもある美しい顔料及び絵具であるが、古典技法においては描かれる人間の肌の血管や陰影部分を表現する為の下層描きに用いられ上層に重ね塗りされる肌の色との補色関係による重色効果の透層技法に用いられる用途がよく知られている。

古典技法においても現代技法においても今もなお多くの技法や場面において使用する事の出来る重要な顔料及び絵具である。