質感とは手触り感や肌理などの材質感の事である。英語ではテクスチャー(texture)が質感という言葉に当たる。
絵では、特にリアルな写実画では、正確な物の形状・陰影・色彩に加えこの質感表現が物を描写するのに重要な要素になる。
とはいえ材質感と言っても絵においてはその絵の作者か又はそのモチーフがその場にでも無い限りは直接触って材質感を感じる事が出来るわけでは無いので(触るにしてもそれは絵具と紙等の支持体になるわけで)目で見た時の視覚により知覚する事の出来る手触り感を描写で表現する事になる。
質感を描くに当たっては直接触って手触りで確かめても良いし視覚で知覚したものに似せていけば良いが質感が実際どの様なものかは理論的な知識として理解しておく方が他の場面でも質感を捉えやすくなる。
では質感とは材質感や手触り感といった〇〇感の様な曖昧な語ではなく具体的にどの様なものなのか?
主に、
・凹凸による形状
・光沢
・透明度
・反射
・模様
の四つの要素で成り立つ。
凹凸に関しては、例えば遠目から見ると二次元的な模様に見えても近づいてよく見たり触って確かめてみるとその模様は描かれたものでなく立体的な凹凸の形状がある場合がある。つるつるとした平滑な物には凹凸は少ないかまたは無く、ざらざらまたらごつごつとした物には凹凸が多くある。凹凸の形状は物により様々に異なりこの事が質感に特徴や個性を与えている大きな部分を占める(例えば金属やプラスチックの表面には凹凸が無くすべすべしていたり、セーター等の編み物の表面は毛糸や編み目の大きく複雑な凹凸の形状があり柔らかで暖かい手触りのざらざら感がある)。
光沢については、その光沢が強いほど光をそのまま反射していて明るくはっきりと見る事が出来る。つるつるとした平滑な金属やガラス等によく見られる。逆にざらざした物にはさほどはっきりとは見る事が出来ず表面に当たった光が乱反射して散光するので柔らかい光沢になる。先の凹凸との関連性が高い。
透明度はその度合いが高いほど本来なら物の表面に当たり色として反射する光を透過してしまいその先にある物を透かして見せるので質感としての特徴としては分かりやすい。光を反射する量が少なくなるので若干透明度の高い部分は同じそうでない部分と比べ暗く沈む(色付きの透明ではその色の明度も加わるのでその限りでは無いが)。
反射も光沢同様に凹凸に影響されやすく当たった光を返す事が反射なので表面が平滑なほど光をそのままの光度で真っ直ぐに返すので反射は強くなり、表面に乱反射を起こすほどの細かい凹凸があるら返す光は散乱して柔らかくなり反射も穏やかなものになる。物が映り込むのも同じく反射であり水面や金属面やフローリングの床と砂や土の地面や木の表面や絨毯や畳などを比較してみると分かりやすい。
模様はその名の通り他の形状が大きく影響する三次元的要素と異なり色や線による二次元的要素で物という三次元要素に模様(及び色面)という二次元要素を貼り付けたものであると質感においては言う事が出来る。3Dグラフィックではポリゴンやワイヤーフレームでモデリング(型作る事)した形状に貼り付けるこうした模様をテクスチャーと呼ぶ事が多い(狭義では光沢や透明度や反射率も含むが)。
質感はこれら四つの要素をモチーフとなる対象物の質感ごとに調整し付与する事で表現が可能となる。