dorayakiBlog

樹脂油絵具について

樹脂油絵具というものがある。 一般にはその名称をあまり聞く機会は少ない。 その可能性は通常の油絵具とは異なる。 純粋の油絵具は塗り重ねを重ねるたびに油分を増やす必要がある。 それは上層の塗膜の強度と柔軟性を増さないと、下層の乾燥に伴う塗膜の動き についていけず、塗膜にひびなどの割れを起こすからだ。 上層の展色材が少ないと下層の塗膜より固く脆いものになる。 そしてもちろん塗り重ねに十分な乾燥を待つ必要もある。 というのが純粋な油絵具の性質である。 もちろん樹脂油絵具も油絵具なのだから、当然その性質を踏襲してはいる。 しかし樹脂成分により少しばかり樹脂絵具の使用方法に近くなる。 ちなみに純粋の樹脂絵具といえばアクリル絵具やアルキド樹脂絵具などがある。 油絵において樹脂は硬さと柔軟性を与える。油と混ざる事でその強度をさらに増す。 油ももちろん耐久性を与えるが、変色や塗膜の劣化が少なくない。 樹脂絵具は水性ならばすぐに塗り重ねる事ができる。油性においても比較的短期間で可能である。 透層技法のグレーズに用いる各種のパンドルも溶剤で希釈された速乾性の樹脂に補強の為の少量の乾性油を加え(または樹脂と揮発性油のみ)、 短期間での透層技法を可能にしている。 とはいえそれらと異なり樹脂油絵具も油絵具同様に油分が主であるから、パンドルや樹脂絵具ほど短期間でないにしろ、 乾燥を待つ必要はある。しかし純粋の油絵具よりは短期間で済む。仕上げのニス塗りは油絵具と同様に半年待つのが賢明であるが。 そして厚く塗った塗膜の上塗りにおいても、透明にある程度薄く何度も塗り重ねる事ができるという利点は描画上とても大きい利点である。 油だけでの描画では薄い上層は硬くなるが柔軟性を失い脆くなるが、樹脂は柔軟性を保ちやすい。 絵具に対して油の量を増やして透明な塗りにしてみても油の黄変や過剰な油分の乾燥の収縮による皺などが懸念されるので、油のみでのグレーズは避けたほうが良さそうである。 アクリルなどの樹脂絵具では厚い薄いといった自由自在な塗り重ねが容易な技法である事が樹脂の有用性を証明する。 シュミンケ社が発売しているダンマル樹脂を含むムッシーニという油絵具が樹脂油絵具と銘打っている数少ない 樹脂油絵具であるが、ほとんどの絵具メーカーが発売しているペインティングオイルなどの調合油には2割程度の 天然または合成樹脂が油と乾燥材とともに含まれているので結果的には樹脂油絵具に近い気がする。 ただ文献などをいろいろ調べてみると、油絵具として含む樹脂量とそれを溶く溶材の樹脂量とで、もう少し樹脂量が必要かと考える。 特に溶材のほうは揮発性油で希釈した樹脂をメインにパンドルよりは多く乾燥性の良い乾性油を少し加える処方になっているものが多い。 樹脂油絵具のある程度自由な塗り重ねと比較的短期間での塗り重ねという、いわゆる一般的な油絵具とは異なる特質な絵具の 性質を活かすには確かにもう少し樹脂量が必要なのかと考える。 もちろん溶材が塗りのメインでなく顔料および絵具が塗りのメインであるから全体としては樹脂は半分未満ではあるが。 通常の油絵具を調合してパレット上で作る事も可能である。 個人の処方にもよるが、絵具と溶材の両方に含まれる樹脂量30パーセントあたりが妥当なのだろうと考える。 発祥当時の本来の油絵具の技法としては樹脂と油を併用したものであったのだろうし、 油のみの技法も悪くはないが、樹脂と併用すると表現の多様性が広がるように感じる。 樹脂の扱いの可能性は大きいと考えてみた。