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シルバーホワイト(鉛白)の特徴

最近、油絵用のパレットと筆などを引っ張り出し、色々いじっている。

なぜかと言えば、シルバーホワイトをまた使うか検討してみようと考えたからだ。油絵、というよりは、シルバーホワイトを使いたいからだ。
以前は、自身が求める絵での様々な条件からあきらめたが、自身の環境の変化もあり、それらの条件も今は解除されたので、あの独特のマチエールの導入を試そうかと考えている。

シルバーホワイト鉛白とチタニウムホワイトの絵具の比較
(左)鉛白 (右)チタン白

かつての巨匠の時代から鉛白という絵具顔料のシルバーホワイトという油絵具がある。
それはシルバーホワイト、クレムニッツホワイト、フレークホワイト、リードホワイトなどの様々な名前を持つ。
19世紀頃までは、主に地塗りと本塗りにシルバーホワイト、
仕上げの上塗りにジンクホワイトが使われてきた。
二十世紀に入りチタニウムホワイトという完全不透明な、混色における制限や有毒性や変色のない、ある種オールマイティに使えるホワイトが作られた。 近年ではセラミックのホワイトも国内の絵具メーカーホルベインから発売されている。

と、数種類のホワイトがあるわけで、日本画の白色や下地剤の白も含めればさらに多い。

それらの中でもシルバーホワイトは他の絵具にはない特性を持つ。

この顔料は固着剤である油と結合する事により、その時に発生する鉛石鹸が塗膜をより強固にする。それはあらゆるメディウム(固着剤)に匹敵する。そして油分の少なく済む性質と鉛の性質により乾燥(酸化重合)を早める。その性質から、なかなか乾きにくいアイボリーブラックにほんの少し混ぜると安定して乾く。コバルトやマンガンとは逆に、乾燥剤としての鉛は内部からおだやかに固める作用がある。
油分の比較的少なくて済み、一つ一つの顔料の形が偏平であるからか、油絵具の他の色の顔料の絵具とは異なるマチエールが個人的には好きだ。
まるでこの顔料自体がメディウムのような特殊性も好むところだ。

しかし良い事ばかりではなく、 暗所に長く置いておいたり硫化ガスや硫黄分に触れると変色したり、 長期にわたり摂取すると、身体にとっての毒性を持つ。
暗所の黄変の場合は日に晒しておけば少しずつ元に戻り、混色や外部の有害な大気などによる変色はニスを引いたり混ぜる事を禁じられている顔料の絵具を混ぜなければ問題はない。それとて温度などの条件が揃う必要性もあると聞く。

艶消し剤を含む画溶液を使うか、艶消しの仕上げ用ニスを使う以外は、 艶消しは油絵では禁忌ではある。
テレピンやペトロールなどの溶剤だけで描くならば艶消しになるが、固着剤である油や樹脂が充分でなくなる為に、絵の表面そして内部の耐久性が無くなり、外部からの有害なガスや水分や光そして物理的な衝撃に対しても弱くなる。新聞紙などに絵具をひねり出して置き、油を紙に吸収させる油抜きという方法で出来た絵具で描くという事も過去に試されたらしいが、耐久性という点ではよろしくないのは明白である。
とはいえ、艶消しの画溶液を使うと成分である油と樹脂の深みと透明さが出てしまうので(良い事です、耐久性も上がるので) 、 市販の画溶液は特に透明度の高い油や樹脂で調合されているので、
多過ぎない補強する為の艶消し剤を含む樹脂と溶剤のペトロールと塗膜強度を自身で高める鉛白で不透明に半艶消しに描く事を試してみたい。

油(オイル)は絵具を練り合わせる為に最低限かそれに少し補強するくらいの量にして、樹脂で絵具の骨格を構成するべきで油は必要悪である、というある一文も、教えの一つとして考えている。

そうなってくると油絵具というより “シルバーホワイト絵具” なる絵具を使ってるような気がする。
しかし逆に言えば、この絵具を使う事は油絵具の要素のかなりのウェイトを占めていると言っても過言ではないと考える。

何より、油絵具であるものの、この絵具の質感が好きだ。

着色力も適度で、半不透明なので混色においても濁りの少ない暖かみとマチエールに奥行きのある白である。 そこも良い。