至福の時間 久しぶりに画材を買いに行く

今日は一年ぶりに新宿へ出た。年の瀬今年も残り一日なので区切りよく新年まで少し休む意味で。

新宿には世界堂という日本有数の品揃えの画材店と他に二つよく行っていた画材店がある。

ここで言う画材店は、デパートなどにある数畳の小さな一角のそれではなく、専門家用の画材を扱うワンフロアもしくはフロアのワンセクションの規模の店舗か、規模の大小問わず専門店を指す。個人経営、小規模のお店、文房具と画材もしくは趣味系の素材も合わせて揃えたデパートのような複合施設などがある。
卸のお店で個人でも買えるお店もある。ベルギーの製造会社の仕上げの為の琥珀のニスをそこで見つけた時は伝説の品を見つけた様な驚きで見つけた時は一瞬動けなかった。小規模のお店のほうが普段見かけないような珍しい品を見る事も稀ではない。外国の絵具やマイナーな絵具、昔の廃盤になった絵具や関係の書籍。まさに宝物の山だ。

新宿に着いてとりあえず、というかまず画材店めぐりをした。してしまった。それは楽しいからこそしてしまうのだ。新製品のチェックや面白い素材はないかと探したり。ついでに懐かしさも噛み締めながら。 そして心惹かれるモチーフになりそうな物も雑貨屋にあったので見てみた。

絵具に限らず素材などのマテリアル関係のお店に行くと、それらの素材で何か作れないかと想像し心踊ってしまう。そして何時間見ていても飽きない位に入り浸ってしまう。結果迷ったあげく何も買わないで帰る事もしばしば(お店側にはとても申し訳ないと思いつつ)。
おそらくカーマニアや整備士の方もパーツショップに入り浸ったりしてしまうのではないだろうかと想像してしまう。他のジャンルの方々もそうかなと。趣味や職業の事で好きであるならそういう事は多々あると思う。

他ジャンルはよく把握しないが、特に画材店は少ない。詳しく調べ数えた事はない、まだ知らないだけかもしれないが、街にひとつもない事の方が多い。地方に行けばさらにない。
(ただ近年は郊外タイプのショッピングモールの広大な敷地の一角を利用した幅広い品揃えの画材コーナーもあり、都会の店舗で扱いづらい巨大なキャンバスなども多く扱っている。)
さすがに楽器店は規模の大きい街なら全てではないがひとつは見つける事ができる。産業規模が違うから仕方ないのかもしれない。ユーザーとしてでなくプレイヤーとしての人口は音楽人口のほうが多いとは思うが、絵の人口もさほど変わらないように思う。統計があるわけではないが、発表などを通して絵の活動をしている人口は日本に30万人いると言われている。一時的に画材を利用する一般ユーザーも含めれば4、50万人はいると推測できる。これらは洋画や日本画や現代アート、書、彫刻などの区分けでイラストやデザインやCGを含めればさらに絵の人口は多いのだろう。

少子化とはいえ、定年退職されて新たに何かを始められる人が絵を選択する事も多いと聞くので、その人口は減りはしないだろう。
文化関連の産業は工業や食品や家電などの産業よりさらに厳しい。不況でまずそこから予算が削られて。それは国家でも家計でも。
絵画を含めたアート作品の日本におけるオークションや美術商などによる取引の市場規模も現代作家の物に限れば100億円規模のようだ。ゲーム産業の5000億円と比べると相当小さい。国内SEO市場や恋愛シミュレーションゲームの市場規模に近いらしい。そういった事情から推測するに他の商売も厳しいのはもちろんだが、画材関連の商売もそれを成り立たせるのは難しいと思う、もちろん収益をあげているメーカーや販売企業はあるものの。教育産業への画材の供給もこれからさらに少子化に拍車がかかる事を考えると。

絵画を描く人口はもうとんとんで大幅に増えないと自分は考える。
というよりも日本人はよく絵を描く人々らしいのでもう限界値にあると思う。確かに漫画文化は世界一でイラストや漫画を自分で描く事を嗜好する人も多い。習い事もなかなか隆盛を極めていて大きなデパートに行けば必ずと言っていいほどカルチャースクールがあるからそうかなと思ってしまう。

衰亡はあるのだろうけど自分が見かける画材店の数は増えはしないものの激減こそしていない、というのが救いというかひそかに安堵している事だ。(縮小傾向は見るにせよ)

自分の好きなジャンルが衰亡するのはとても寂しいことだ。

なので画材店がもっと増えて繁盛してほしいと願う、絵を見るのと同じくらいの至福の時間だから。個人的に。

人生において、そんな時間も大切にしたい。

そして小さ過ぎる力しかないが、自分に何が出来るかもよく考えてみたい。

良いお年を。

参考資料:33項.我が国の芸術家人口 〜引用元:文化庁参考資料より〜
参考資料と業界の諸説を総合し、区分の仕方により増減はあるにせよ概ねこの通りと、推測する。