油彩画用液においてパンドル(仏語:peindre)とは描画用のワニス(ニス)の事である。正式にはベルニアパンドル(vernis a peindre)と呼ばれ英語で言う所のペインティングバーニッシュ(painting varnish)と同義である。
揮発性油のテレピン油(ターペンタイン)で天然樹脂であるダンマル樹脂を溶解させたダンマルワニスに乾性油であるポピーオイル(芥子油)を少量加えて描画に適する調合をした画用液である。石油系の揮発性油のペトロールと合成樹脂に置き換えた現代的なパンドルもある。パンドルは液状の若干黄色みがかった透明な見た目をする。
特性としてはダンマル樹脂による、高い光沢、高い透明性、強い粘性、強力な定着力、見た目の乾燥の速さ、乾燥後に樹脂の中では中程度に硬い皮膜になる耐久性、樹脂の持つ柔軟性、を油絵具に与える。加えて少量加えられた乾性油が経年劣化により脆くなりがちな樹脂に硬さを与え更に耐久性を高める。テレピン油を溶剤に使用しているので筆の伸びも良い。
現代的なパンドルではペトロールや低臭ペトロールを使用しており、昔ながらのパンドルより、石油臭(または少ない臭いの石油臭)であり低溶解性の為少しどろっとする筆の伸びであり緩やかな揮発性であり、無色の合成樹脂を用いているのでとても強い耐久性とクリアな色味に近い液体となる。
基本的な使用方法としては、市販のペインティングオイルに光沢や透明性等に物足りなさを感じた場合に加えたり、調合溶き油を自作する時の樹脂ワニスとして使用する。パンドル単独でも絵具と混ぜて描画に使用する事も出来るが樹脂分がとても多い為に速乾性が高く一回の塗りで素早く一気に仕上げてしまうアラプリマ技法や薄い塗りを何層にも重ねるグレーズ技法が向いている使い方になる。体感としては比較的すぐに筆の運びが重くなる。混ぜる量に比例してそして単独使用であるほどその度合いが強くなる。
注意点としては、絵具と混ぜてあまり極端に厚塗りしてしまうと、多く含まれる樹脂分により内部は中々乾かないが絵具の表面だけは急速に乾いて一見しっかりと乾いたかの様に見えてしまう事があるので、パンドルで描いた厚い塗りの上にさらに重ね塗りをする場合は、絵の亀裂・剥落の原因になりやすい乾燥の際に起こる絵具の膨張・収縮が収まる頃合いである内部までよく乾燥したのを見極めて待つ必要がある。