ビリジアン(viridian)は緑色の顔料および絵具の名称である。ラテン語で緑を意味するviridisが由来であり、またベール・エメロード(仏)やギネ・グリーン(英)等とも呼ばれる。
来歴は近代でさほど古く無く顔料の元素は18世紀には発見されていたが19世紀中頃にフランスのパリで絵具製造業者のパンヌティエと後を引き継いだギネーにより顔料として開発され特許の取得を経て工業製品化され鮮やかな緑色としてそれまで使用されていた毒性の高いエメラルドグリーンに代わり広く普及した。
原材料としては水和酸化クロム(含水酸化クロム) Cr₂O₃及びH₂Oから成る。 顔料の分類は合成無機顔料となりカラーインデックス名(C.I.Name)ではPigment GreenのPG18となる。主に重クロム酸カリとホウ酸を加熱・浸水・冷却・濾過・洗浄・粉砕・湯洗・不純物除去・乾燥等の化合を経て作られる。同じ水和酸化クロムの顔料として不透明な鈍い緑色のオキサイドクロムグリーンがありビリジアンも透明オキサイドクロムとも呼ばれる事もある。
絵具化した際の色相はまさに宝石のエメラルドの様な鮮やかで美しい緑色になる。黄緑色寄りでも青緑色寄りでも無い純然たる緑色に近い。ただ透明度が高いので厚塗りでは光を反射せずに吸収してしまい暗色の緑色になってしまうので薄塗りや不透明な白や黄色等を混色して本来の色としての真価を発揮する(故に新たな色調の絵具を調色する素材としても用いられる)。
特徴としては前述した様に顔料の粒子の大きさから透明度がとても高い。着色力も強い。耐光性(紫外線による褪色に対する耐久性)もとても強く、耐酸性や耐アルカリ性にも優れ、硫化ガス等の有害な大気に対する耐候性も高い。毒性や混色制限も無く扱いやすい。油絵具の場合は多く含む油分に対して乾燥剤が多くなるので乾燥性は速くなる(厚塗りでは表面だけ先に乾いて乾燥が遅くなる可能性も)。若干他の色と比べて高価の部類に入る。
用途としては油絵具や各種水性絵具において幅広く用いられている。前述した様に透明水彩の様な薄塗りや重ね塗り出来る絵具でのグレーズ技法(透層の重ね塗り)や他の色との混色で使われる事が多く(不透明水彩では不透明化されているのでその限りで無いとして)、または速乾で耐久性の強いアクリル絵具では厚塗りの暗色であっても問題無く使う事は出来る。近年では安価で劣らない性能で色調の近い合成有機顔料であるフタロシアニングリーンがビリジアンのヒュー絵具として代替される事もある。とはいえ混色において自然の緑色を作り出したり現代的な鮮やかで派手な緑色を作ったりと幅広く緑色の基本色とする事も出来、現代でも主要な緑色顔料および絵具として使用されている。