一般的に画家が持つイメージとされるパレットと言えば茶色い木製の円形状に近いパレットである。
現代ではこの様な白く塗装・加工されたパレットも販売されている。
元々、茶色のパレットは古くから中世の西洋の欧州で使用されていた。とりわけ当時主流となりつつあった油絵を描くのにも使用されていた。油絵やテンペラの下地及び土台となる支持体が最初の頃は茶色い木の板をパネルにした物が使用されていて、絵具を板パネルに置くと絵具が持つ透過性により下地の色の影響を受けるので混色の調色をしやすい様にそれに合わせてパレットも同じ色にされたと言われている(加えて当時他にも絵具の練り合わせで用いられていた石や鉄より軽く持ちやすく使いやすい板が採用されたからかもしれないが)。
その後に、板パネルに白や好きな色で下地処理する事が出来る様になっても昔の伝統の名残や有色下地による技法の描きやすさの為に、板パネルやその他にも元々白い紙や白く塗装された又は膠処理しただけの布生地のキャンバス等にも下地色を茶系色で処理する時代が18世紀中頃〜末期まで続いていたので現代でもその名残で茶色いパレットを使う人はとても多い。日本でも伝統的な西洋画や油絵やその技法が輸入された時期にも重なる為か分からないが。
そして18世紀中頃に当時は前衛的な芸術家であった印象派の画家たちの登場から現代に至るまで、伝統に従いキャンバス等の支持体に有色の特に暗い色での下地処理をする事が少なくなり白く塗装されたキャンバスにすぐさま描き始める技法が主流となったので、現代における需要としてペーパーパレットを始め白いパレットも開発されたと考えられる。
白いパレットの利点として、現代の標準になった白いキャンバスや画用紙に、絵具を混色して紙やキャンバス等の支持体に置く時の、パレット上と支持体上での絵具の下地の色の透過による重色混色で作られる色の差が無く描きやすいという利点がある。加えて白地と有彩色の地に絵具を置いた時にその絵具の色が周囲の色から受ける影響の差も含めて。
とはいえ茶色いパレットでも色の差はそれほど少なくも感じられ慣れればキャンバス上に絵具を置く時に色差を計算に入れつつ混色し描く事は出来るけれど白い支持体に描く上では余計な手間である事は間違いないので省けるに越した事はない。
もちろん茶系色で下地及び下描きの段階において薄塗りを重ねて徐々に有彩色で厚く着色していく技法も現代でも多く使われるので茶色のパレットも有用に使う事が出来る。
ちなみにデコラ張りとはパレットの素材となるシナベニヤ板を白く塗装する際にさらに耐溶剤性及び耐久性の高い特殊樹脂(フェノール樹脂)で加工・コーティング・保護された仕上げとなる。たしかに自分のデコラ張りホワイトパレットも数え切れないほど使っているのに揮発性溶剤で手入れしているからかほとんど傷やしみや汚れが残ってないのを見るとその効果も頷けるものがある。