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黄土色イエローオーカーについて

一般におうど(黄土)色と呼ばれるこの色はイエローオーカー(yellow ocher)という名称でもよく知られる。黄土という名から分かる様に土性の顔料を使用しており色相や色調としては砂や土や岩肌等に度々見る事の出来る少し低い彩度のくすんだ黄色い褐色またはくすんだ赤みを帯びた黄色い褐色をしている。白色を混ぜて薄めたり透明な薄塗りでは柔らかく温かみのある淡い赤みを帯びた黄色にもなる。

イエローオーカーの顔料は粘土(カオリン)や珪石(シリカ)等を含む天然土であり水含の酸化鉄である水和酸化鉄(Fe₂O₃・H₂O)から成る(または合成の黄色い色調の酸化鉄による)。アメリカやイギリスの色料の規格であるC.I.Name(カラーインデックス名)ではPigment YellowのPY42(合成)及びPY43(天然)である。顔料区分の分類では黄土及び土性系顔料は天然無機顔料となる。同じ土性系の顔料に黄褐色のシェンナや暗褐色のアンバー(PBr7)や緑土色のテールヴェルトがある。黄土を焼成すると水分が抜けて赤みを増しレッドオーカーと呼ばれる赤褐色になる。原産地としてはフランスやイギリスやイタリアで採れる天然産が良質であるが品質にばらつきがあり供給に対する安定性は弱いとされる。

絵具化した顔料の性質として不透明度が高く(天然黄土や同系統のシェンナは半不透明)、着色力は適度な中程度の強さで、被覆力(隠蔽力)も程々にあり、乾燥の遅い油絵具においても乾燥性の良い絵具となる(天然産は合成物より若干遅い)。耐光性(紫外線による色褪せに対する強度)や耐候性(熱や水分や有害な大気等による変色や破壊に対する強度)は全色において最高クラスの堅牢性であり、耐アルカリ性にも優れ(酸には敏感)、化学反応を起こしにくい不活性さを持つので他の色との混色制限も無く、毒性も無く、どの種類の絵具においても汎用的に広く使用されている。最も安価(天然物は合成物より若干高値)な部類の顔料及び絵具でもある。

描画の用途としては、原材料の入手しやすさや製造しやすさから洋の東西を問わず世界的に最も古い有史より使われてきたとされる。混色による調色においても鮮やか過ぎない自然な中間色の色調の黄色絵具としても使いやすく原色に近い黄色顔料の種類が多くなかった古代においては重要な黄色絵具の一つであった。故に古典的な色調の作品や茶系統色の単色画では特に使用される割合が高い。油絵やテンペラやアクリル絵具等の重ね塗りする事の多い絵具の技法では白や黄土や茶系統色で下地を施し下描きもしつつ上層に塗る鮮やかな有彩色に陰影や深みや温かみを与える為の下地に欠かせない色の一つとしても古来より用いられている。現代的な絵においても、使用の上層か下地かを問わずナチュラルな自然の雰囲気で親しみを覚えやすいアースカラーや微妙なニュアンスを伝える渋い色を持つ絵具として今もなお多くの技法や場面において使用する事の出来る重要な顔料及び絵具である。